第 51 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 06
部位/臓器 鼻腔,副鼻腔,鼻咽頭,咽頭 鼻腔
演題名 再発を繰り返す鼻腔腫瘍の一例
出題者および所属
長沼 廣1、大谷紀子2、小川武則3
鈴木直弘3、沖津卓二3
(1 仙台市立病院病理科、2 東北大学医学部付属病院病理部、3 仙台市立病院耳鼻科)

症例の概要・問題点
症例 64歳 男性
主訴 右化膿性血性鼻汁、右鼻閉
既往歴 特になし
現病歴 平成10年3月頃より右の化膿性血性鼻汁と鼻閉が出現し、同年5月に近医を受診。
CTにて骨破壊は見られないものの、右前頭洞・上顎洞にかけて一側を占める腫瘤陰影を
認めた為、精査目的に当院耳鼻科紹介受診。

現症 右鼻腔を充満する柔らかい腫瘍が見られた。
画像所見 右側の上顎洞・鼻腔・鼻咽頭腔右側にかけて腫瘤が見られ、
単純CTで筋肉よりやや低吸収を呈し、
造影CTにて不均一に増強される。骨破壊や眼窩内への浸潤は認めない。

治療経過 平成10年9月に腫瘍全摘術を施行した。腫瘍はmyofibroblastic tumorと診断した。
術後、紹介医で経過観察していた所、同年12月腫瘍が再発し、術前とほぼ同じ大きさまで
増大した為、再摘出を行った。平成11年3月に再び腫瘍が増大し、この時にCT上腫瘍内に
骨形成を認めたが、骨破壊像は認めなかった。腫瘍減量術を行い、組織診断にて骨肉腫成分を
見たため、66Gyの照射を行った所、残存腫瘍の縮小を見た。
しかし、同年10月再び腫瘍増大したため、右上顎全摘術を施行。
迅速診断にて眼窩部断端に腫瘍細胞陽性であったが、境界が不明で眼球摘出手術は
施行しなかった。同年11月末から化学療法を開始した。平成12年3月再び腫瘍増大し、
眼球の圧排、鼻中隔の左方偏位、蝶形骨の破壊が見られ、腫瘍摘出は困難であるため、
出血、疼痛に対する対症療法のみが行われている。初回から現在まで遠隔転移は
全く確認されていない。

組織所見 初回の腫瘍細胞は紡錐形で、やや粘液性の間質を持ち、細胞密度は低く、
異型も比較的軽度であった(配布標本?:平成10年9月)。
α-antichymotrypsin陽性、VM弱陽性で、SMA、DM、S-100、CD34は陰性、
MlB-1も殆ど染色されず、コンサルトの結果、MFH、fibromyxoid sarcomaも否定できないが、
低悪性度のmyofibroblastic tumorが最も考えられると判断した。
再発腫瘍(配布標本?:平成11年10月)は細胞密度が上昇し、異型が増し、類骨を形成し、
骨肉腫への分化を示唆していた。


問題点 腫瘍の本体は何か?初回手術標本でこれだけ悪性態度を示すことが予想できるのか?
最終病理診断 Myofibroblastic tumor, low grade malignant potential.