第 53 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 03
部位/臓器 唾液腺
演題名 長年にわたり再発を繰り返した耳下腺腫瘍の1例
出題者および所属
浅野重之1,田崎和洋2
1いわき市立総合磐城共立病院病理科,2福島県立医科大学附属病院病理部
症例の概要・問題点
はじめに 術後21年にわたり,6回の局所再発を繰り返した左耳下腺腫瘍の1例につき,
病理学的,電顕的およぴに免疫組織学的に検討し,その発生母地を推察しうる
興味ある所見が得られたので,若干の考察を加えて報告する。

症例 71歳,男性
主訴 呼吸困難
既往歴 1980年4月に左耳下腺腫瘍のため某病院にて手術。その後,
1991年9月,1993年8月,1994年6月,1996年1月,1999年4月に局所再発した。

現病歴 1999年10月,MRIにて左耳後下部に腫瘤を認めたが,今回は患者の希望にて手術はしなかった。
2001年1月下旬から呼吸困難が出現した。外来受診にて脱水,呼吸不全のため入院となる。
入院後も全身状態の改善がみられず,肺炎および胸水が持続し,
呼吸不全のために同年1月14日死亡。

病理学的所見 腫瘍細胞は,しばしば好酸性の細胞質を有し,
大小の腺管構造ないし篩状構造を形成して増殖,浸潤している。
電顕的には,管腔側に少数の短いmicrovilliがみられ,細胞間にはtight junctionがみられる。
細胞質内に電子密度が高く暗調を呈する細胞と,明るい基質でmitochondriaが多く,
oncocyteに類似する細胞が見られる。
さらに,細胞質内には多くのtonofilamentを有し,基底膜も明らかで,
細胞間の樹指状結合が多くみられ,よく発達したdesmosomeがしばしば認められる細胞も存在する。
免疫組織染色では,Keratin, EMA, α-FPは陽性で,
Vimentin, α-SMA, CEA, S-100 protein, Amylase, Lysozyme, Lactoferrinは陰性である。
但し,CEAとLysozymeでは陰性細胞数>陽性細胞数で,α-FPでは陽性細胞数>陰性細胞数である。


問題点 ?病理診断および?発生母地
最終病理診断 Adenocarcinoma, NOS

配布標本 再発した腫瘍