第 68 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 22 区分 B. 典型例・教育的・その他の症例
部位/臓器 消化管 胃
演題名 再発乳がんホルモン療法中に出現し、自然消退した胃T/NK細胞増殖症の1例
出題者および所属
橋本 優子1),北條 洋1),阿部 正文1)
冨永 邦彦2),雨宮 秀武3),山崎 和秀4)
小田島 肇5),木村 悟6),神林 裕行6)
松田 信6)
1) 福島県立医科大学医学部 病理学第1講座
2) 竹田綜合病院 病理科
3) 同 外科、
4) 同 消化器科
5) 太田綜合病院付属西ノ内病院病理科
6) 同 血液疾患センター
症例の概要・問題点
症例 47歳 女性
既往歴 14年前右乳癌に対し乳房全摘+腋窩廓清,術後化学療法+放射線療法(50Gy).
9年前まで内服化学療法施行.4年前子宮頚部CISにて円錐切除,右胸壁局所再発にて再切除,
放射線(50Gy)照射,LH-RH拮抗剤服用開始.3年前胃潰瘍.
現病歴 胃潰瘍の既往あり,胃内視鏡検査を定期的に受けていた.
2007年9月の定期内視鏡検査にて胃体中下部前壁から大弩にかけ,陥凹局面があり,
早期胃がん(0-IIc type)が疑われ生検された.
胃粘膜固有層には,中型リンパ球様異型細胞が増殖していた.
免疫染色にてリンパ球様異型細胞はCD3, CD45, CD56, Granzyme B陽性, CD4, CD5, CD8, CD20陰性を
示しNK/T cell phenotypeを示した.EBER-1 in situ hybridizationは陰性だった.
その後検査を行ったが,LDH: 169, sIL-2R: 223と正常範囲,EBV-抗体価は既感染パターン.
副鼻腔・鼻腔を含め他部位に病変は認められなかった.胃原発NK/Tリンパ腫と診断され,
治療のため2007年10月に転院した.
転院後に行われた複数回の胃内視鏡検査では病変が確認されなかった.
その後,胃病変の再発は認められない.
配布写真 初回胃内視鏡所見および生検像(HE, CD3, CD56, Granzyme B)

問題点 病理診断(2008年春季病理学会にて,新たなT/NK細胞増殖症として
リンパ腫様胃症: lymphomatoid gastropathyが提唱された.
この症例もリンパ腫様胃症:lymphomatoid gastropathyに合致すると考えられる.
疾患の全貌はまだ不明である.
症例の蓄積,経過把握が重要であり,今回提示させていただいた.)
最終病理診断 NK/T lymphomatoid gastropathy