第 68 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 06 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 神経系,下垂体,松果体 中枢神経系
演題名 髄膜癌(meningeal carcinomatosis)の1剖検例
出題者および所属
奥村 有理1),大藤 高志2),及川 崇紀3)
望月 廣3)
1) みやぎ県南中核病院 研修医
2) 同 病理科
3) 同 神経内科
症例の概要・問題点
症例 83歳 女性
経過 およそ2年前から物忘れが目立っようになってはいたが,自宅で脳梗塞と認知症のある夫の
面倒を見ていた.死亡4ヶ月前に長女が電話した時,元気が無く返事も返って来ず応答が
おかしかった.その1週間後に長女が行って2人の面倒をみるようになったが、直ぐ自力歩行が
出来なくなり尿失禁も出てきたので,近医受診後に当院神経内科に紹介入院となった.
亜急性認知症の疑いで入院し,亡くなるまでの間の特記事項として,
?第2病日に腰椎穿刺で髄液を抜いた際には意識障害の改善が顕著であったが,
第11病日にはこれが見られなかった,
?亜急性認知症を説明できる神経疾患を明らかに出来なかった,
?MRIで脳室拡大(+)でガドリニウム増強効果なし,
?第30病日の造影CTで右肺尖部に腫瘍陰影が認められ,30, 39病日の喀痰細胞診陰性,
31, 38病日の髄液で腺癌細胞陽性,髄液CEAは持続的高値,腰椎穿刺で髄液の出が良かったのは
入院当初のみ,などが挙げられる.
中枢神経系の最終診断は髄膜癌(髄膜癌腫症)で,積極的治療は取られていない.
剖検所見 ?右肺上葉の腺房型腺癌.転移・浸潤はびまん性髄膜癌(大脳・上部頚髄)と脳室系の一部のみ.
?びまん性大脳白質変性.
?肺動脈塞栓症.
?急性/慢性心不全.
症例提示の目的 広範な大脳白質変性症の原因に髄膜癌,抗癌剤,放射線,ウイルス感染,Binswanger病,
正常圧水頭症などが挙げられているが,本例の髄膜癌は大脳・上部頚髄にびまん性に見られ,
大脳皮質のVirchow-Robin腔に癌細胞が詰まっている所も多かった.
大脳白質変性を考える上で興味ある症例と思い供覧する.なお,提出した標本は前頭葉の1ケ所.

最終病理診断 肺がん由来のmeningeal carcinomatosisに基づく白質脳症による認知症