第 67 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 08 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 気管,肺,胸膜 胸膜
演題名 左側胸水貯留で発見された両側胸膜病変
出題者および所属
木村 伯子1), 岩代 望2), 若林 修3), 石舘 卓三1)
1) 国立病院機構 函館病院 病理
2) 同 呼吸器外科
3) 同 呼吸器内科
症例の概要・問題点
症例 44歳 男性
家族歴 父 胃がん,結核
職歴 配管工事半年間従事.ホテルフロント+メンテナンス(屋根裏掃除50-60回/20年間)
生活歴 20歳からタバコ20本/日,アルコール(-),アレルギー(-)
既往歴 特記すべきことなし
現病歴 2ヶ月前に検診で左胸水貯留を指摘された.精査のため当院を紹介された.咳,痰はなく,左胸部から側腹部の圧迫感,易疲労感がある.
画像所見 胸部レントゲン写真: 左側胸水貯留あり.胸膜プラークや不整型陰影無い.
FDG-PET/CT 左肺尖,肺底区の胸膜に限局的な集積があるが,腫瘤の形成は無く,炎症性疾患の疑い.他部位に活動性の所見なし.
気管支鏡検査 可視気管支粘膜面に異常なし.
胸腔鏡 壁側胸膜の軽度の結節性病変が散見される.右胸膜にも軽度の肥厚がみられる.
配布画像 左右の胸膜がVATSで生検された.標本1:左胸膜,2:右胸膜生検組織
組織が小さいためpptによる画像のみを供覧させていただきます.

問題点 病理診断
最終病理診断 右胸膜:器質化胸膜炎.左胸膜:中皮腫,アデノマトイド型.

コメント 左胸膜の軽度の肥厚と右胸膜の横隔膜上の軽度の肥厚がみられ,両側性の腫瘍かどうかを知るためにVATSが行われた.生検では右胸膜は器質化胸膜炎,左は中皮腫,アデノマトイド型と診断された.その結果,左肺・胸膜全摘術が施行された.胸膜は部分的に肥厚し,横隔膜筋層に浸潤がみられた.また,中皮腫の非浸潤性病変(precursor lesion)も多くみられ,中皮腫の比較的早期の症例だった.
画像1 画像2
右器質化胸膜炎(HE) 右器質化胸膜炎(CAM5.2)

画像3 画像4
左胸膜中皮腫,アデノマトイド型,横隔膜への浸潤像(HE) 左胸膜中皮腫非浸潤性病変