第 67 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 04 区分 A.難解・問題症例
部位/臓器名 唾液腺
演題名 紡錘形細胞を主体とし,術後2年で再発をきたした耳下腺腫瘍の1例
出題者および所属
原田 博史1),谷川 健2), 檜垣 浩一3), 武田 泰典1)
1) 岩手医科大学歯学部 口腔病理学講座
2) 久留米大学医学部 病理学講座
3) 医療法人雪ノ聖母会 聖マリア病院 病理科
症例の概要・問題点
症例 89歳 男性
病歴  77歳時に左耳前部に腫瘤を自覚するも放置.その後も縮小しないため近医総合病院耳鼻科を受診し,82歳時に耳下腺腫瘍の診断の下,腫瘍の切除術を受けた.その2年後84歳時に再発を認めるも再度放置.今回同院を受診し,放射線治療後に再度切除術を施行された.初発以降現在まで遠隔転移は指摘されておらず,引き続き経過観察中である.

問題点 病理組織診断
なお,初回切除時の病理組織診断はcarcinoma ex pleomorphic adenomaであったが,retrospectiveには明らかなpleomorphic adenomaの領域は確認されず,再発時の組織像も初回とほぼ同様であった.配布した切片は再発時の外科切除標本の一部である.
最終病理診断 広範な化生性変化を伴った上皮筋上皮癌

演者診断 広範な化生性変化を伴った上皮筋上皮癌.
コメント 腫瘍は淡い好酸性胞体を有する紡錘形細胞および類円形細胞を主体とし,部分的に腺上皮と明細胞の形態をとる筋上皮よりなる2層性腺管を含んでいた.前者は著明な多形性を呈したが,光顕上核分裂像には乏しく,MIB-1標識率も非常に低いことから増殖能の面では高悪性の癌腫とは言い難かった.また前者は少数ながら脂腺細胞を含み,極めて特殊な分化の存在を示唆することからも後者の脱分化を通じて生じた可能性は低く,化生性変化から生じたものと判断した.
画像1 画像2
腫瘍は淡い好酸性胞体を有する紡錘形細胞および類円形細胞を主体とする. 一部の結節は腺上皮と明細胞の形態をとる筋上皮よりなり,2層性の配列も認められる.

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外層の筋上皮は免疫組織化学的にS100蛋白(左)およびp63(右)に陽性を呈する. 主体をなす紡錘形細胞および類円形細胞は広範にEMA陽性,一部involucrin陽性を呈し(inset),上皮筋上皮癌の化生性変化から生じたものと解された.