第 55 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 04 区分 B(典型的・教育的・その他の症例)
部位/臓器 甲状腺
演題名 高度なmyxoid changeを伴う悪性甲状腺腫瘍
出題者および所属
湯田文朗1,斉藤仁昭1,笹野伸昭1,今井 大1
野村 隆2,岩渕勝好2,阿部正理2
妹尾和克3,片桐 茂3,峯田武興3
山形市立病院済生館病理1,同内科2,同外科3
症例の概要・問題点
症例 70歳 男性
主訴 前頸部腫瘤
家族歴 特になし
既往歴 1998年11月 肺気腫,右肺腫瘤(経過観察中)
現病歴 1999年9月中旬に、前頸部に腫瘤を自覚した。その後腫瘤が急速に増大するため、
10月6日当院内科外来を受診し、悪性甲状腺腫瘍が疑われ入院となる。
前頸部に弾性軟の径約8cmの腫瘤を触知す。圧痛なし。皮膚発赤なし。頸部リンパ節腫張なし。嗄声なし。
検査所見 頸部CT検査と超音波検査では甲状腺右葉に境界が明瞭で、内部均
一な径5×6.5cmの腫瘍を認めた。タリウム、テクネシウムおよびガ
リウムシンチでは異常集積は確認されなかった.甲状腺穿刺細胞診
では採取細胞は少なく、裸核状紡錘細胞が少数散在するのみで、良
悪の判定は困難であった(再検せず。)。甲状腺機能に異常は認めず、
calcitoninは基準値内であった。CEAは12ng/mlで高値を示した。
また1年前の右肺腫瘤の精査のCT検査上で、甲状腺右葉に径1.5×
3cmの腫瘤が確認されていた。肺腫瘤は肺癌を疑っていたが、確定
診断に至らず、また腫瘤の増大は認められなかったため、経過観察
となっていた。
手術所見 急速に増大する腫瘍で、臨床的には甲状腺未分化癌を疑っていたが、
画像診断所見や明らかな転移巣が確認されず、外科的に切除可能と判定し、
1999年11月11日甲状腺右葉切除術を施行した。
肉眼上では境界明瞭で、被膜状構造を伴う柔かい径8cmの腫瘍であった。
割面では均一な粘液腫状外観を呈し、出血や壊死は確認されなかった。
術後経過 術後放射線療法と化学療法を施行したが、14カ月後に頸部局所再発が確認された。
その後腫瘍は急速に増大し、2001年10月10日死亡した。病理解剖は承諾されなかった。
また経過中に、喀痰細胞診で陽性所見が確認され,肺腺癌が推定された。

問題点 病理組織診断
最終病理診断 Anaplastic carcinoma of the thyroid

配布標本 摘出腫瘍
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