第 66 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 14 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 心,血管系 血管
演題名 急性動脈閉塞にて発症し微小塞栓を繰り返した1例
出題者および所属
大崎市民病院 病理診断科1 仙台厚生病院 病理部2
大崎市民病院 外科3 東北公済病院 心臓血管外科4

坂元 和宏1, 岩間 憲行2, 鈴木 佑輔3,
小ヶ口 恭介3, 並木 健二3, 関野 美仁4
症例の概要・問題点
症例 69歳 女性

既往歴 高血圧,高脂血症にて内服加療中 糖尿病(-) 喫煙(-)

現病歴 2年前より両下肢の疼痛,蒼白を認め,近医で加療されていたが,症状が増悪したため,当院外科受診となった.受診時,両下肢の疼痛,蒼白,右下肢の知覚異常,軽度の運動麻庫が認められた.造影CTにて右膝下動脈以下の途絶と下行大動脈の内腔の狭小化や壁の石灰化が認められた.下行大動脈血栓症による下肢急性動脈閉塞と診断されカテーテルによる塞栓子の摘出術が行われた(標本1).その後,抗凝固療法が開始されたが,微小血栓が繰り返されたため,下行大動脈血栓症について心臓血管外科に紹介となり,下行大動脈置換術が施行された.切除された大動脈内腔には肥厚した白色の内膜が認められた(標本2,3).

配布標本 カテーテルにて摘出された塞栓子(#1),手術にて摘出された大動脈壁(#2)と肥厚した内膜(#3)


問題点 病理診断

最終病理診断 Intimal sarcoma.


コメント 腫瘍細胞は好酸性の胞体を持ち,N/C比が高く核異型も認められた.免疫組織化学的には,CD34とvimetinのみが陽性であり,ki-67陽性細胞が多数認められた.腫瘍の発生部位とこれらの所見より大動脈内膜肉腫と考えた.腫瘍組織内には壊死が広範囲に認められ,この広範な壊死によって腫瘍が剥がれやすく,臨床的に腫瘍塞栓をきたしやすいものと考えた.
画像1 画像2
腫瘍肉眼象 腫瘍組織像

画像3
MIB-1(Ki-67)免疫染色