第 54 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 16 区分 [1.難解・問題症例]
部位/臓器
演題名 膵頭部に発生したhypervascular tumorの一例
出題者および所属
古川 徹1)、渡辺みか2)
1) 東北大学大学院医学系研究科分子病理学分野、2) 東北大学医学部附属病院病理部
症例の概要・問題点
症例 66歳男性.
嘔吐および体重減少(9kg/3ヶ月間)を主訴に近医を受診し、腹部超音波
検査上,胆嚢腫瘍との診断にて紹介入院となる.入院時,黄疸を認めず,右上腹部に
手拳大、可動性が比較的良好な弾性硬の腫瘤を触知した.血液検査では血清アミラー
ゼが高値を示すも、胆道系酵素,膵内分泌ホルモンは正常範囲内であった.一方,
CA19-9 は180U/mlと高値を示していた.腹部CT上,胆嚢腫瘍は否定され,膵頭部に径
約6cm 大,造影早期から濃染される腫瘤性病変が確認された.腫瘍内部は中心壊死に
よると考えられる低吸収を呈していた.腹部血管造影検査では腫瘍の存在部位に一致
して上膵十二指腸動脈からfeeding される腫瘍濃染を認めた.これらの画像検査から
は中心壊死に陥った非機能性膵ラ氏島腫瘍が最も疑われたが,ERCPでは膵頭部の主膵
管に陰影欠損が認められ,膵液細胞診の結果は陽性,adenocarcinoma疑いであった.
以上より,術前に確定診断を得るにはいたらず,主膵管に浸潤を認める膵頭部の
hypervascular tumor との診断にて幽門輪温存膵島十二指腸切除術を施行した.膵頭
部に6×6×3cm 大の比較的境界が明瞭な腫瘍を認め,肝転移,リンパ節転移はなく,
切除は可能であった.術後は順調に回復し,第15病日退院となった.現在術後1年を
経過し健在である.


問題点 1.診断
2.悪性度
最終病理診断 Acinar cell carcinoma of the pancreas.

配付標本 膵腫瘍