第 65 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 21 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 眼及び付属器
演題名 眼窩内腫瘍の一例
出題者および所属
福島県立医科大学附属病院 病理部1),福島県立医科大学医学部 病理学第一講座2
田中 瑞子1),渡邉 一男1),阿部 正文1)2)
症例の概要・問題点
症例 69歳,女性
既往歴 特記すべきことなし
経 過 3ヶ月前より頭痛,鼻漏が出現し,近医で副鼻腔炎と診断され治療を受けていたが改善がみられないため,市内のA総合病院を受診した.CTを撮影したところ眼窩腫瘍が疑われたため当院に紹介された. 造影CTでは右涙嚢窩を主体に右眼窩から鼻涙管にかけて造影効果のある腫瘍が認められた.同部の生検では低分化型腺癌の診断であり,胃癌の転移などを疑われ全身検索が行われたが原発巣は認められなかった. 右眼窩内腫瘍切除術を施行されたが、鼻涙管の鼻側断端が陽性であったため,6週間後に残存腫瘍切除術を施行され,篩骨洞粘膜,前頭洞粘膜,上顎洞粘膜,下鼻甲介,中鼻甲介および顔面皮膚の一部を切除された.
標 本 眼窩内腫瘍の一部

問題点 病理診断
最終病理診断 Syringomatous carcinoma.
フロアよりacnatholytic SCCではないかという意見あり.

コメント 腫瘍は内眼角真皮から鼻腔,副鼻腔まで広い範囲に進展しており,眼窩内に径1.5cmの腫瘤を形成していた.組織学的には豊富な線維性間質を伴って異型細胞が浸潤性に増殖しており,"おたまじゃくし状腺管"やbasaloid cellの充実性増殖,腺管の嚢胞状拡張,角化を伴った扁平上皮化生など多彩な像を示した.これらの特徴は汗管由来の良性腫瘍であるsyringomaに類似しており,syringoma様の構造をもつ汗管由来の癌の総称であるsyringomatous carcinomaを診断名とした.
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おたまじゃくし状腺管 充実巣

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腺管構造 嚢胞状拡張,角化