第 65 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 19 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 神経系,下垂体,松果体 中枢神経系
演題名 稀な脳腫瘍の一例
出題者および所属
岩手医科大学 病理学第一講座
佐藤 雄一,黒瀬 顕,澤井 高志
症例の概要・問題点
症例 38歳 男性
既往症 平成14年に統合失調症と診断された
現病歴 平成18年9月頃より右下肢の脱力を自覚.11月に眩暈,手足の震え,頭痛を主訴に近医受診しMRIにより脳腫瘍が発見され本学付属病院脳神経外科紹介となった. CTでは左円蓋部にほぼ均一な高吸収域を示す腫瘤がみられ,正中偏位を伴っていた.MRIでは造影効果を伴い,T1WIで等信号,T2WIで等信号からやや高信号を示す8.5cmx8.5cmx5cmの腫瘤がみられ,髄膜腫と臨床診断された. 平成19年3月手術.左大脳半球脳表に接する,比較的柔らかく易出血性で,周囲脳組織との境界明瞭な10cm超の腫瘤を全摘した. 術後は神経の脱落症状はなく退院.

最終病理診断 Papillary meningioma (WHO Grade III)

コメント Papillary meningioma(PM)は若年者に発生する稀な腫瘍である.通常の髄膜腫よりも再発転移が多く悪性度が高い.病理診断に関しては,1) papillaryという名前が付いているが実は細胞離開の為に生じた二次的変化であり,pseudopapillaryであること(図3,図4),2) 上衣腫でみられるような血管周囲の偽ロゼットを重視すること(図1, 図2),3) 髄膜腫の他の亜型を含むことがあるので全体の検索をすること,以上が重要である.WHO grade IIIであるが,PMの全てが悪性か否かは議論の余地がある.
画像1 画像2

画像3 画像4