第 65 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP
−TN) 抄録データベース |
出題者および所属 |
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市立函館病院 中央検査部臨床病理科1),消化器病センター外科2)
工藤 和洋1),下山 則彦1),原 豊2)
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症例の概要・問題点 |
症例 |
80歳代男性 |
既 往 歴 |
慢性腎不全(死亡3年前より) |
経 過 |
胃部不快感あり死亡2ケ月前当院消化器科受診.胃に腫瘤が認められ,胃痛の診断となった.死亡46日前当院外科にて幽門側胃切除術を行った.幽門部に4.5cmx7.0cmの1型腫瘍が認められ,幽門部から十二指腸の内腔を占拠しており,ほぼ閉塞状態であった.深達は筋層に達していた.6番リンパ節(幽門下リンパ節),8番リンパ節(総肝動脈幹後部リンパ節)は膵臓に浸潤しており,完全郭清できなかったため根治度Cとなった.体部大彎側にも1.5cmの腫瘍が認められ,通常の早期胃癌,乳頭状腺癌, pT1(pM)の所見であった.術後,急激な腹部大動脈周囲リンパ節腫脹,悪液質状態の悪化を来し,術後46日目死亡した(全経過64日).
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配布標本 |
幽門部胃腫瘍の一部 |
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問 題 点 |
1. 病理組織診断
2. 急激な臨床経過との関係について
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最終病理診断 |
Undifferentiated gastric carcinoma(EBV(+)およびCK,vimentinの共発現あり.Lymphoid stromaははっきりせず.Vimentin陽性の未分化癌(rhabdoid changeを含む)は予後不良とする報告ありとのこと) |
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コメント |
核小体が明瞭で腫大した核,好酸性の胞体をもつ異型細胞が結合織の間で増生しています.細胞同士の結合は全体的に弱いですが一部で集塊を形成しています.鍍銀染色では胞巣状構造が認められます.免疫染色ではAE1/AE3, KL-1,EMA,MUC-1が陽性,Vimentin がびまん性に陽性です.EBV-LMP, EBER-ISHも陽性です.E-cadherin,β-catenin といった細胞接着因子の発現も低下していました.神経内分泌マーカー,筋原性マーカー,リンパ球マーカー,メラノーマ系マーカーは陰性でした.(1) 核小体が明瞭で,水泡状のクロマチンが見られること(2) 細胞質の好酸性が強いこと(3) サイトケラチン陽性と陰性細胞があり,かつビメンチンがびまん性に陽性であることなど,rhabdoid feature を一部兼ね備えていますが,細胞質内封入体は少ないため,胃原発未分化癌と診断しました. |
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画像1
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画像2
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CT |
肉眼像 |
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画像3
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画像4
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HE |
免疫染色 |
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