第 65 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 10 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 口腔,咽頭
演題名 下顎骨腫瘍の一例
出題者および所属
函館五稜郭病院 パソロジーセンター1),同 歯科口腔外科2)
池田 健1),宮澤 政義2)
症例の概要・問題点
症例 70歳代 女性
既往歴 骨粗鬆症
現病歴 平成14年より骨粗鬆症にてビスフォスフォネートを服用していた.平成18年10月,左下顎第2小臼歯部のびらんがあり近医歯科医院にて抜歯・生検が施行された.生検では悪性所見は得られなかった.平成19年3月,同部の痛みが消失しないため当院歯科口腔外科を受診した.左下顎犬歯・第1小臼歯部に骨シンチグラフィにて強度の集積を,CTスキヤンにて骨吸収像を認めた.臨床診断はビスフォスフォネートによる骨髄炎であった.病変部からの生検で扁平上皮癌が疑われ,左下顎犬歯・第1小臼歯および下顎骨の一部を含む領域が切除された.

問題点 扁平上皮胞巣内に微小骨片がトラップされ,特異な組織像に見えます.扁平上皮癌で良いでしょうか.ビスフォスフォネート服用の影響についてもご教示いただきたい.
最終病理診断 Squamous cell carcinoma.
特異な骨破壊像がbisphosphonateによる破骨細胞抑制の結果である可能性は否定できないが,確定には至らず.

コメント ビスフォスフォネート服用歴を有する70歳代女性である.歯肉と連続し右下顎歯槽骨浸潤を示す扁平上皮癌を認めた(図1).一般に,骨浸潤を示す癌胞巣と骨基質との間には多くの破骨細胞が介在する(図2,対照症例).本症例では,破骨細胞を介さずに癌細胞が骨基質と接着するという特異な組織像がみられた(図3および図4).ビスフォスフォネートによる破骨細胞抑制がそのメカニズムと推測された.
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