第 65 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 02 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 消化管 小腸
演題名 小腸腫瘤の一例
出題者および所属
山形大学医学部人体病理病態学分野1)
山形県立河北病院 外科2)
柳川 直樹1),本山 悌一1),滝口 純2)
症例の概要・問題点
症例 71歳,男性
家族歴・既往歴 10年前,多発胃癌で胃亜全摘術施行
現病歴 手術の約1ヶ月よりふらつき,全身倦怠感,血便を認め,内科を受診し,その際に著明な貧血(RBC 154万/μl,Hb 4.2 g/dl,Ht 13.7%)を指摘された.上部消化管では内視鏡出血病変は認められなかったが,腹部CTにて小腸腫瘍が疑われ,出血シンチグラムにて小腸からの出血が疑われた.輸血等行うも貧血の改善なく,準緊急的に手術が施行された.
手術所見 腹腔内に多量の出血を認めた.Treiz靭帯より約200cm肛側の小腸(回腸)に出血を伴う腫瘤を認めた.
肉眼所見 腫瘤は大きさ60mmx30mmx60mm,灰白色調で壊死を伴っており,小腸粘膜下層から漿膜外(腸間膜脂肪組織)に進展し,一部横行結腸への浸潤を認めた.小腸内腔には腫瘍の露出による潰瘍性病変を認めた.
配布標本 腫瘍組織

問 題 点 病理診断
最終病理診断 Undifferentiated carcinoma with sarcomatoid feature, small intestine (Sarcomatoid carcinoma of the small intestine). また,フロアおよび座長より肺の多型癌の転移の可能性はないかという意見あり.

コメント 小腸に発生しEndophyticな発育を示した腫瘍(図1).腫瘍は充実性シート状の癌腫様の形態を呈する多角形の腫瘍細胞(図2)と明らかな紡錘状の肉腫様の形態を呈する腫瘍細胞(図3)からなり,多核巨細胞を混じていた(図2,図3).免疫染色にて両者の細胞はcytokeratin (AE1/AE3), CAM5.2, EMA, vimentin陽性であり sarcomatoid carcinomaと診断した.
画像1 画像2

画像3