第 64 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP
−TN) 抄録データベース |
演題番号 |
17 |
区分 |
B. 典型的・教育的・その他の症例 |
出題者および所属 |
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門間 信博 盛岡赤十字病院病理部 |
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症例の概要・問題点 |
症例 |
74才,女性. |
現病歴 |
平成18年9月11日腰痛を主訴に病院入院.胸椎圧迫骨折を認め,鎮痛剤などで経過観察されるが食欲不振,DIC ,胸水貯留などを認め全身状態悪化したため精査加療のため10月4日当院血液内科紹介入院となった.
入院翌日に施行した骨髄穿刺検査で腺癌が検出された.内視鏡検査で胃には腫瘍性病変なし.CTにて腹部大動脈周囲リンパ節腫大が認められ,大腸癌が推測された.全身状態が悪く,下部内視鏡検査は施行できなかった.対症療法のみにて経過.呼吸状態が悪化し,10月15日午後0時10分死亡.
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入院時検査所見 |
WBC 5610/μl, RBC 331x104/μl, Hb 9.5 g/dl, Ht 28.3 %,
Plt 25000/μl, Fib 382 mg/dl, FDP 144 mg/l, AST 64 IU/L, ALT 23 IU/L,
LDH 2013 IU/l, ALP 5043 IU/l, γ-GTP 77 IU/l, T-Bil 3.1 mg/l, TP 5.6 g/dl,
BUN 15 mg/dl, Cr 0.33 mg/dl, CRP 21.9 mg/l, CEA 69.3 ng/ml, CA19-9 46.3 U/ml,
sIL2-R 4020 U/ml, 便潜血陽性.
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剖検所見 |
上行結腸癌;tub2, INFc, SE, ly3, v3. 転移;骨髄,左右副腎,肝,左右 肺内での動脈・静脈・リンパ管の腫瘍塞栓,リンパ節 (腹部大動脈周囲,上行結腸周囲 リンパ節,小腸間膜リンパ節,縦隔リンパ節,右肺門リンパ節)
1) 肺浮腫 (430g, 460g) 2) 黄疸 3) 肝,脾臓での随外造血 4) 黄疸 5) 脾臓の腫瘍様結節 (6x5x4cm) 6) 大動脈粥状硬化
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配布標本 |
周囲脾臓との境界部を含む脾臓の結節. |
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問題点 |
脾臓に6x5x4cm大の肉眼的には境界が明瞭な結節が認められた.何か. |
最終病理診断 |
Splenic hamartoma |
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症例は74才の女性.骨髄への広範囲な転移をきたした上行結腸癌の剖検例で,剖検時に脾臓 (110g)に6x5x4cm大の,周囲との境界が明瞭な,周囲の脾臓よりは明るい褐色の結節が1個認められた.
組織では結節の境界は不明瞭であった.結節では白脾髄,赤脾髄の基本的な構築は保たれている.白脾随では中心動脈周囲にT-cellが集族しているのが認められ,またリンパ濾胞も認められるが,T-cell領域は狭く,リンパ濾胞は萎縮している.赤脾随では脾洞が大きく不整形で,脾索は拡大している.拡大した脾索では毛細血管が増加している.結節および周囲の脾臓にて髄外造血が認められた.Naphtol AS-D chloroacetate esterase陽性顆粒を有する顆粒球系の幼弱細胞と巨核球芽認められたが,赤芽球は確認されなかった.ただし発表の際に赤芽球もあったというfloorからのコメントがあった. |
演者診断 |
脾臓の過誤腫 Hamartoma |
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肉眼では境界明瞭であるが組織では境界不明瞭なのがこの病変の特徴のひとつ.脾洞が増殖していることからlittoral cell angioma,あるいは拡大した脾索で毛細血管が増殖していることからcord capillary hemangiomaと鑑別を要するが,結節の中に白脾髄,赤脾随の成分が揃っているのでhamartomaとみるのが妥当と考えた.髄外造血は癌の骨髄への転移のためと考えられた.脾臓のhamartomaの報告例の多くでは髄外造血を伴っている.
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画像1
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画像2
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脾臓 (110g) に境界明瞭な結節. |
右が正常脾臓,左が結節.両者の境界は不明瞭. |
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画像3
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画像4
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結節.不整形な拡大した脾洞と拡大した脾索. |
CD20でみたリンパ濾胞の分布.上1/4は正常脾臓で,下3/4の結節ではリンパ濾胞は萎縮. |
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