第 64 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP
−TN) 抄録データベース |
演題番号 |
02 |
区分 |
B. 典型的・教育的・その他の症例 |
出題者および所属 |
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佐々木 一葉1),大山 健二1),若狭 治毅2),木村 伯子3)
1) 独立行政法人労働者健康福祉機構 東北労災病院 耳鼻咽喉科
2) 東北文化学園大学,日本病理研究所
3) 独立行政法人労働者健康福祉機構 東北労災病院 病理・検査科
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症例の概要・問題点 |
症例 |
71歳 女性 |
主訴 |
左耳下部腫脹 |
既往歴 |
C型肝炎・肝硬変,食道静脈瘤,胆石手術. |
現病歴 |
1ヵ月半前から左耳下部が腫脹してきたため,当院耳鼻咽喉科を受診した.触診で,左右耳下腺部に無痛性の腫瘤を指摘された.右耳下部腫瘤の穿刺吸引細胞診は陰性だった.MRI検査では左右の耳下腺のWarthin腫瘍が疑われた.左右耳下腺腫瘍摘出手術が行われた. |
MRI |
左右頚部に耳下腺由来と考えられる腫瘤を認めた.左は長径2.2cm大,右は長径1.2cm大で,T1強調画像・T2強調画像ともに低信号を示した. |
血液・生化学所見 |
WBC 7400 /μl(Neut 68.7%,Eosi 2.2%,Baso 0.4%,Mono 5.9%,Lymph 22.8%),RBC 469万/μl,Hb 14.2g/dl,Plt 8.8万/μl,T-bil 1.5 mg/dl,GOT 45 IU/l,GPT 40 IU/l,ALP 271 IU/l,CRP 0.07mg/dl |
術後経過 |
当院耳鼻咽喉科で定期的に経過観察中であるが,現在再発無し. |
配布標本 |
左耳下腺組織 |
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問題点 |
病理組織学的診断 |
最終病理診断 |
B-cell lymphoma of MALT type |
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コメント |
本例は両側の耳下腺に発生した稀な腫瘍症例である.病理組織所見では,腺上皮の周囲に中型水泡状の核と明るい胞体を有する異型リンパ球(centrocyte-like cells)が集蔟し,また唾液腺上皮内にも同様の異型細胞の浸潤(LEL)がみられた.更に,その周囲には小型の成熟リンパ球が集簇して浸潤していた.免疫染色では上記の中型異型リンパ球はCD20陽性,CD79α陽性,CD3陰性,CD5陰性,CD10陰性,MUM1陰性,κ軽鎖陰性,λ軽鎖陰性であった.Ki67の陽性率は50%であった.小型リンパ球はT細胞とB細胞が混在しており単クローン性の性格はみられず,反応性のリンパ球と考えられた.以上よりMALT型悪性リンパ腫と診断した.臨床的に口腔内乾燥症は合併しておらず,シェーグレン症候群は否定された.その後判明した遺伝子検査の結果ではAPI2-MALT1キメラ遺伝子は陰性であった. |
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画像1
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画像2
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左耳管線腫瘍.残存している健常部の耳下腺(下半分)には,脂肪浸潤と導管周囲のリンパ球浸潤が高度にみられる.腫瘍部分(上半分)は既存の耳下腺組織がほとんどなく高度に異型リンパ球が浸潤している. |
同上.導管周囲に明るい細胞が集簇し,同様の細胞が導管上皮内にも浸潤している(LEL).周囲の暗調部分では成熟した小型リンパ球が浸潤している. |
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画像3
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画像4
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同上.腫瘍細胞は核胞体比が大きく,水泡状で明るい不整形の核と明瞭な核小体を有している. |
同上.腫瘍細胞はCD20陽性である. |
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