第 64 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 01 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 唾液腺
演題名 耳下腺腫瘍の一例
出題者および所属
日下部 崇1),渡辺 一男2),鈴木 利光1)
福島県立医科大学 医学部 病理学第二講座1)
福島県立医科大学附属病院病理部2)
症例の概要・問題点
症例 76歳,男性
現病歴 約2年前から左耳下腺部の腫瘤を自覚したが放置した.腫瘤が徐々に増大し,疼痛も出現したため近医を受診した.耳下腺腫瘍の疑いで,当院形成外科を紹介され平成18年10月,精査加療目的に入院した.MRIにて左耳下腺下極に42×35×30mmの境界明瞭な腫瘤が描出され,穿刺吸引細胞診にて扁平上皮癌が疑われたが,組織診の検体は正常唾液腺組織のみで確定診断には至らなかった.11月,左耳下腺浅葉摘出術が行われた.

肉眼所見 変は大きさ2.8×2.0 cm,周囲組織との境界明瞭は明瞭.割面は黄色調,多分葉状で,中心部に壊死と嚢胞形成が見られた.

配布標本 摘出腫瘤

問題点 組織診断
最終病理診断 Infarcted Warthin's tumor

診断 Infarcted Warthin's tumor
コメント Infarcted Warthin's tumorはWarthin's tumorの6・7%に合併する稀な病態である.広範な壊死、壊死に引き続く著明な線維化、黄色肉芽腫形成、化生上皮の出現などが主な組織所見であるが、壊死が高度で既存のWarthin's tumorの成分が残っていない場合、診断は難しい.針穿刺行為、局所の循環障害、放射線照射などが誘引と考えられているが、原因は解っていない.
画像1 画像2
ルーペ像.中心性壊死を示す腫瘤と、その周囲の圧排された既存の耳下腺組織. ゴースト状の円柱上皮が被覆する乳頭状構造とリンパ球様間質.

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2の銀染色. 壊死巣周囲に増生する線維組織の中に散見される化生上皮.