第 62 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 15 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 消化器 小腸
演題名 小腸に発生した限局性病変の1例
出題者および所属
笠島 敦子1) 森谷 卓也1) 渡辺 みか1) 遠藤 希之1) 赤平 純一1)
石田 和之1) 苅谷 嘉之1) 高橋 賢一2) 小林 照忠2) 舟山 裕士2)
増田 高行3) 笹野 公伸1),4)
1)東北大学病院 病理部 2)東北大学病院 胃腸外科 3)東北大学医学部 保健学科
4)東北大学大学院医学系研究科 病理診断学分野
症例の概要・問題点
症例 20才代,男性
主訴 下腹部痛・発熱
家族歴・既往歴 特記事項なし
現病歴 2002年10月近医で虫垂切除術施行.この際に回腸末端から口側50cm
の範囲に炎症所見を認めたが,精査の結果,非特異性腸炎として経
過観察されていた.2005年7月腹痛・発熱あり,腹膜炎の診断で入
院.保存的治療にて症状は軽快し,炎症反応は改善したものの,画
像上,腸間膜腫瘍が疑われたため,9月に生検の目的で開腹手術が
行われ,回腸の認められた病変が摘出(回腸部分切除)された.
肉眼所見 Bauhin弁の口側45cm・75cmの範囲に限局し,回腸から腸間膜内にか
けて多数の小嚢胞が密に集簇する病変.
配布標本 回腸の主病変の一部.

問題点 病理学的診断
最終病理診断 Primary intestinal lymphangiectasia
(Mesenteric lymphangiomaの腸壁内進展とする意見あり)
演者診断 原発性腸管リンパ管拡張症
コメント 腸管リンパ管拡張症には,原発性と続発性がある.原発性は若年者に多く,
先天的なリンパ管低形成によって生じると考えられている.いずれの場合も
腸管全層に拡張したリンパ管が存在することが特徴とされている.高齢者に
多くみられる1cm程度の隆起性病変は,リンパ管拡張性嚢胞とよばれる微少
なリンパ液うっ滞によるもので,病変が粘膜下層に存在することが特徴的であり,
リンパ管拡張症とは区別される.
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