第 62 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 08 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器
演題名 肝腫瘍の一例
出題者および所属
大竹 浩也1),斉藤 仁昭1),前田 邦彦1)
山川 光徳1),竹下 明子2),森谷 敏幸2)
鈴木 明彦2),平井 一郎2),須藤 幸一2)
布施 明2),木村 理2)
1) 山形大学医学部 発達生体防御学講座 病理病態学分野
2) 山形大学医学部 器官機能統御学講座 消化器・一般外科学分野
症例の概要・問題点
症例 18才,女性
家族歴 特記すべきことなし
既往歴 生後より代謝性疾患のため近医通院中
現病歴 2003年7月,かかりつけ医で腹部超音波検査を受け,肝左葉の腫瘤
を指摘された.10月に当院第2内科へ紹介され,CT検査にて肝S3の
径30mmの腫瘤が確認された.2O04年4月,再度CT検査を行ったとこ
ろ腫瘤は40x35mmへ増大していたため,2004年8月18日に当院にて
肝部分切除術を施行された.
術前の血液生化学検査ではAST 115 IU/l,ALT 62 IU/l,γ-GTP
121IU/l, WBC 2310/μl, TG 1490 mg/dlと軽度の肝障害と白血球の
減少,中性脂肪の著明な上昇が認められた.腫瘍マーカーはCEA
0.77 mg/ml, CA19-9 9.5 U/ml, AFP 1.7 ng/mlといずれも正常範囲であった.
肉眼所見 肝腫瘍は直径32x38mmで境界は明瞭,割面は黄白色調で均一であった.
周囲の肝は腫大し,通常よりやや黄白調であった.
配布標本 切除標本

問題点 病理診断について
最終病理診断 Hepatocellular adenoma assocoated with von Gierke disease(糖原病?a型)
(FNHやHCCとの鑑別に関して肝結節性病変内の異常血管の有無,
類洞内皮の免疫組織学的性状などについて質疑応答があった)
演者診断 糖原病Ia型に併発した肝細胞腺腫
コメント 糖原病Ia型(von Gierke disease)の症例です.非腫瘍部では肝細胞は腫大し,グリコーゲンの蓄積と中等度の脂肪変性を伴っていました.腫瘍部は非腫瘍部と不完全な線維性被膜で区分されており,Glisson鞘の欠損と軽度の細胞異型が認められましたが,分裂像は稀で細胞密度の増加も見られないことより肝細胞腺腫と判断しました.
画像1 画像2
1. Azan染色.腫瘍部(右)と非腫瘍部(左)の境界には不完全な線維性被膜が見られる.腫瘍部にはGlisson鞘は認められない. 2. HE染色.腫瘍部の強拡大像.腫瘍細胞は軽度の核異型を伴い,泡沫状の胞体を有する.

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3. HE染色.非腫瘍部の強拡大像.肝細胞は泡沫状の細胞質を有し,腫瘍部の細胞と類似している. 4. PAS染色.非腫瘍部の強拡大像.腫大した肝細胞にはグリコーゲンの蓄積が見られる.