第 62 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 16 区分 B. その他の症例
部位/臓器 腹膜,後腹膜及び関連組織 腹膜
演題名 腸間膜腫瘍の1例
出題者および所属
長沼 廣1),渋谷 里絵2),三橋 智子3),佐山 淳造4),酒井 信光4)
1)仙台市立病院 病理科,2)東北大学大学院医学研究科 病理病態学講座 病理診断学分野,
3)東北大学大学院医学研究科 病理病態学講座 病理形態学分野,4)仙台市立病院 外科
症例の概要・問題点
症例 63歳,女性
主訴 発熱,下腹部痛
既往歴 鉄欠乏性貧血,Alzheimer病
現病歴 半年前から発熱,下腹痛あり.近医で抗生剤を投与され,軽快して
いたが,下腹部腫瘤を指摘され,腹部腫瘍疑いで,当院紹介.
検査 CTでは右下腹部に10cm大の腫瘤が見られ,均一な濃度で,内部に淡
い低吸収域が見られた.大動脈周囲に4cm大の腫瘤も見られ,Gaシ
ンチで取り込みあり.消化管に異常なし.悪性リンパ腫が最も考え
られた.
入院時現症 腹部に圧痛を伴う小児頭大の腫瘤を触知.
手術所見 悪性リンパ腫が疑われたため,開腹生検を目的として手術施行した
が,迅速診断で悪性リンパ腫は否定されたため,腫瘍摘出術を施行
した.腫瘤は小腸を巻き込み,小腸間膜内に見られた.直径10cm大
で境界明瞭だが,多結節性で,膀胱とも癒着していた.腫瘍は腸
管・膀胱と剥離可能で,摘出された.その他,Treitz靱帯,大網,
結腸間膜に最大胡桃大の茶色・黒色結節を多数認めた.
配布標本 腸間膜腫瘍の一部

問題点 1)組織診断 2)予後について
最終病理診断 S-100陽性を示した管外性悪性GIST
最終診断 Malignant extraGIST arising from mesenterium
コメント 本例は腸間膜から発生し,大小の転移を伴った悪性GIST例である.
胃腸管外GISTは比較的稀で,最近までは40例程度報告されている.
本例はc-kit及びS-100が強陽性で,CD-34, desmin, SMA, GFAP,
NSE, NFP, HMB-45はすべて陰性であった.胃腸管発生のGISTの
約20%にS-100陽性を示すという報告があるが,胃腸管外GISTは
全例S-100陰性のようである.本例はS-100陽性を示し,
かつ悪性所見を示した稀な症例であった.
画像1 画像2
紡錐形腫瘍部分 類上皮様配列,偽ロゼット配列を示す部分

画像3 画像4
c-kit染色像 S-100染色像