第 62 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 01 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器臓器名 神経系,下垂体,松果体 中枢神経系
演題名 脳幹部腫瘍の一例
出題者および所属
宮城県立こども病院 臨床病理科1),脳神経外科2)
武山 淳二1),林 俊哲2),白根 礼造2)
症例の概要・問題点
症例 12歳,男性
現病歴 約半年前から右の複視(右外転神経麻痺)が出現していた.
MRIを施行したところ,橋を圧排する,最大径4cmの腫瘍が認められた.
術前診断はepidemoid cystであった.
手術では,病変の多くが吸引にて摘出され,一部が切除,病理に提出された.
配布した標本は,その組織を半割し,作製したものである.

問題点 病理組織診断は?
最終病理診断 Intradural chordoma
(Giant ecchordosis physaliphoraとの鑑別)
演者診断 Intradural chordoma
コメント 粘液状の基質を背景に空胞の目立つ細胞が増生しており,
免疫染色では上皮系マーカーと S-100 蛋白が陽性で,
脊索の遺残に由来する病変と考えられた.
硬膜内発生や骨浸潤の欠如など典型的とはいえないが,大きくなり,
臨床症状を呈してきたことを重視し,Ecchordosis physaliphora
よりはむしろchordoma の亜型とする方が妥当ではないかと考えた.
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(図1) MRI T1 強調画像,矢状断.斜台付近から生じたと思われる病変が脳幹部を圧迫している.骨破壊は明らかでない (図2,3) 豊富な粘液を背景に空胞の目立つ細胞が増生している.空胞内には豊富なグリコーゲン顆粒を認める.

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