第61回日本病理学会東北支部学術集会座長総括 |
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演題番号1 |
座長名:手塚 文明 (仙台医療センター臨床検査科病理)
演者診断名:Sclerosing fibrosarcoma
討議内容:
(1) 大腿(内転筋内)腫瘍と肺内腫瘍とは基本的に同一の組織像で,後者は前者からの転移とみられ,前者は悪性と考えられる.
(2) 大腿腫瘍について,生検標本でdesmoidと診断するのはやむを得ないが,手術標本ではcellularityの高いところがあり悪性が示唆される.硬化性変化が強いためSclerosing
fibrosarcomaとする.
(3) Low-grade fibromyxoid sarcomaとの意見も多かったが,myxoid regionに乏しいところから否定される.
(4) 本例のようなsclerosing fibrosarcomaは組織学的にlow-gradeにみえるが予後不良であることに留意すべきであるとの貴重なコメントがあった.
最終診断名:Sclerosing fibrosarcoma
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演題番号2 |
座長名:手塚 文明(仙台医療センター臨床検査科病理)
演者診断名:Malignant pneumocytoma
討議内容:
(1) この腫瘍がマーカー検索から肺上皮由来であり,間質の硝子化が目立ち,"Sclerosing hemangioma(=pneumocytoma)"との類似が示された.
(2) 通常のsclerosing pneumocytomaに比べて,血管腫様変化に乏しく,多発性であることから疑問が残る.
(3) 通常の肺原発腺癌としても小病巣の多発がある点で異例である.
(4) 病巣の分布から転移性も否定できないが,原発巣が発見できない.
(5) 今後経過を見て結論を待ちたい.
最終診断名:Carcinoma of pneumocytic origin
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演題番号3 |
座長名:手塚 文明(仙台医療センター臨床検査科病理)
演者診断名:Interstitial pneumonia due to Hermansky-Pudlak syndrome
討議内容:
(1) 肺および骨髄のmacrophagesにlysosomal dysfunctionにもとづくセロイドの沈着があり,Hermansky-Pudlak syndromeと診断された.
(2) 肺の間質性肺炎は本症候群に伴う変化と理解される.またトリコスポロン抗体の増加があり,過敏性肺炎の像も加わっていた.
(3) 肺病変について平滑筋増生が目立ち,この増生についてLAM病変との異同が問題になるが,議論にはならなかった.
最終診断名:Interstitial pneumonia with focal hypersensitivity reaction
in Hermansky-Pudlak syndrome
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演題番号4 |
座長名:黒滝 日出一(大館市立総合病院臨床検査科)
演者診断名:Mesonephric hyperplasia or apocrine tubular adenoma
討議内容:
アンケートではadenomatoid tumor が多かったが,免疫染色でcalretinin陰性ということから否定的であるとされ,mesonephric hyperplasiaとするためにはCD10陰性,管腔内のコロイド状の物質が見られず,どちらかと言えばapocrine tubular adenomaを考えた方がよいのではないかとされた.Apocrine tubular adenomaとするには2層性が目立たず,他の点では問題ないので,念のためにapocrine系を認識するマーカーを用いて免染を施行することがすすめられた.
最終診断名:Apocrine tubular adenoma, most likely.
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演題番号5 |
座長名:黒滝 日出一(大館市立総合病院臨床検査科)
演者診断名:Spindle cell epithelioma of the vagina
討議内容:演者の診断名として問題がないということでした.
最終診断名: Spindle cell epithelioma of the vagina
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演題番号6 |
座長名:黒滝 日出一(大館市立総合病院臨床検査科)
演者診断名:Leiomyosarcoma of the scrotum arising from tunica dartos
討議内容:
特に診断に関して異議がなく,演者の診断が採用された.
最終診断名:Leiomyosarcoma of the scrotum arising from tunica dartos
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演題番号7 |
座長名:上杉 憲幸(岩手医科大学医学部臨床病理)
演者診断名:Nodular fasciitis (NF)
討議内容:
(1) 顔面骨骨折の既往との関係は不明であるが,抜歯後に背部等の無関係な場所にNFが多発した症例のコメントがあり,本症例もそれに準じている可能性はある.
(2) Inflammatory myofibroblastic tumorとの鑑別点は今後の検討を要す.
(3) NF発生と無線業務(電磁波が影響)との関係についてのコメントが演者より示された.
(4) 演者診断に対する異論はなかった.
最終診断名:Nodular fasciitis
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演題番号8 |
座長名:上杉 憲幸(岩手医科大学医学部臨床病理)
演者診断名:Basal cell carcinoma of the tongue
討議内容:
(1) Polymorphous low-grade adenocarcinomaとの鑑別について意見を求めたが,意見は出なかった.
(2) 組織内に腺腔ないしは腺腔様構造あり,免染組織化学的に腺癌を示唆する所見はなかったか?→演者の検討した染色では腺癌を示唆する結果は得られなかった.
(3) 演者診断についての異論は見られなかった.
最終診断名:Basal cell carcinoma of the tongue
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演題番号9 |
座長名:上杉 憲幸(岩手医科大学医学部臨床病理)
演者診断名:Amelanotic melanoma
討議内容:
(1) フォンタナ・マッソン染色で陽性細胞がわずかに認められたが,amelanotic melanomaの診断で良いか→陽性細胞はわずかであり,本診断に従って取り扱いを進めるのが妥当である(amelanotic melanomaの方がconventionalなmelanomaより予後が悪いため).
(2) Merkel cell carcinomaの可能性は?また,S-100,HMB-45以外にmelan A等の染色を施行しているか→行っていない.演者としてはendocrine系の腫瘍は考えていなかった.
(3) 演者診断に対して,基本的に異論は出なかった.
最終診断名:Amelanotic melanoma
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演題番号10 |
座長名:加藤 哲子(山形大学医学部環境病態統御学講座)
演者診断名:Oncocytic cortical carcinoma
討議内容:
(1) 悪性であること,oncocytic cellからなる腫瘍であることについて意見が一致したと思われる.
(2) Oncocytic tumor については通常のWeiss分類ではなく,Bisceglia分類の適用が望ましい.
最終診断名:Oncocytic cortical carcinoma
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演題番号11 |
座長名:加藤 哲子(山形大学医学部環境病態統御学講座)
演者診断名:Intraabdominal synovial sarcoma
討議内容:
(1) Mesotheliomaをrule outした理由は?→中皮系マーカー陰性
(2) 染色体分析(synovial sarcomaに特異的なCYT-SSX fusion etc.の検出)をしたか?→していない
(3) 病理解剖の承諾は得られず,サンプリングはできなかった.現時点の所見だけから確診は困難であるが,永久標本でも検索可能な手段はいくつか残されているので追加検討されたい.
最終診断名:さらなる検討を要す.
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演題番号12 |
座長名:加藤 哲子(山形大学医学部環境病態統御学講座)
演者診断名:
1. Congenital hepatic fibrosis+Caroli's disease
2. Cholangiocellular carcinoma associated with 1
討議内容:
(1) Autoimmune diseaseの可能性については?→血清学的には否定的.
(2) 炎症はsecondary? 病態(fibrosis)の一部?→感染等に伴う2次性か.
(3) Congenital hepatic fibrosis, Caroli's disease, およびpolycystic kidneyは嚢胞形成性病変としてoverlapする点が多い.本例もそうであり,CCCを契機に57才にして偶然発見された希少例と考えられる.
最終診断名:
1. Congenital hepatic fibrosis+Caroli's disease
2. Cholangiocellular carcinoma
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演題番号13 |
座長名:八木橋 法登(青森市民病院臨床病理科)
演者診断名:Metaplastic carcinoma with spindle cell and squamous diffrentiation
討議内容:
Spindle cellを含め,筋マーカーが陽性でmyoepitheliumへの分化がみられ,myoepithelial carcinomaとすることの妥当性は?→本例は扁平上皮や腺上皮への分化がみられ,像が多彩すぎるのでmyoepithelial carcinomaとするには無理がある.
最終診断名:Metaplastic carcinoma with spindle cell and squamous diffrentiation
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演題番号14 |
座長名:八木橋 法登(青森市民病院臨床病理科)
演者診断名:Leiomyosarcoma
討議内容:
Leiomyosarcomaにするにはcaldesmonが陽性であるが,α-SMAの染色程度が弱く,desminが陰性であり,組織像からも合わないのではないかという意見があった.むしろmyofibrosarcomaが疑われるという意見だった.しかしながら,caldesmonはmyofibroblastには出ないということで演者はleiomyosarcomaとした.
最終診断名:Leiomyosarcoma or Myofibrosarcoma
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演題番号15 |
座長名:八木橋 法登(青森市民病院臨床病理科)
演者診断名:Gliosarcoma
討議内容:
初回の手術標本ではグリアへの分化のほとんどないsarcomaだったが,3回目の手術ではglioblastomaが主体を占めていた.以上よりgliosarcomaと演者は診断した.フロアーより,初回の手術でfibrosarcomaとコンサルタントより診断された症例が再発時にglioblastomaが明らかになったとの発言があった.
最終診断名:Gliosarcoma
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演題番号16 |
座長名:中村 直哉(福島県立医科大学医学部病理学第一講座)
演者診断名:Transient pancytopenia preceeding ALL
討議内容:
(1) 骨髄生検(1回目)線維化と成熟リンパ球(B>T)を認めた.3回目の骨髄生検で定型的なprecursor-B ALLになったが,1回目の材料をどう考えるか.
(2) 鑑別診断としてALL, AML(M7)などの白血病をまず考える.その他はprimary
myelofibrosisなど.
(3) M7の診断には,CD41やCD61が有用.ALLには,TdT, CD34が有用.
(4) 本症例では,成熟巨核球を除きCD41陽性細胞はなかった.また,3回目ではTdT陽性だが,1回目はTdT陰性であり,鑑別は難しかった.→免疫組織化学
(5) 生検材料では,touch smearをつくると,芽球の同定に有用なことがある.
最終診断名:Transient pancytopenia preceeding ALL
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演題番号17 |
座長名:中村 直哉(福島県立医科大学医学部病理学第一講座)
演者診断名:Infectious mononucleosis with rupture of spleen
討議内容:
(1) 臨床上は典型的な伝染性単核球症だが,脾破裂の機序は?
演者は,静脈周囲に細胞浸出が目立ち,脾髄の亀裂・出血を来たした可能性を指摘したが,有意な所見であると同意する意見及び被膜下の細胞浸潤がむしろ重要ではないかとする意見が出された.
(2) 脾破裂は伝染性単核球症の0.5%程度に見られること,本邦ではRBC感染率が低下しており,今後伝染性単核球症が増加する可能性が高いことが紹介された.
最終診断名:Infectious mononucleosis
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演題番号18 |
座長名:中村 直哉(福島県立医科大学医学部病理学第一講座)
演者診断名:Reactive lymphodenitis?
討議内容:
(1) 広汎な線維化,好中球,マクロファージなど多彩な炎症性細胞浸出を示した3才男児のリンパ節の診断,及び血液貧食症候群,脳症状の関連,病態が討議された.
(2) 血管炎に類似する所見を含むため,自己免疫疾患との関連が示唆されたが,臨床的には証拠なし.悪性リンパ腫を含む悪性疾患の可能性は否定的.EBV陰性.(血中DNA6陰性)その他ウィルス抗体価は検索した全てに有意な所見無し.コンセンサスなし.候補もなし.
最終診断名:Unknown
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演題番号19 |
座長名:田中 正則(弘前市立病院臨床検査科病理)
演者診断名:AVM+Chronic pancreatitis
討議内容:
AVMとしてはややatypicalな点はあるが,AVMがmost likelyと考えられる.AVMがあって,その後ゆっくりとpancreatitisが進行した病変と考えられる.
最終診断名:AVM followed by chronic pancreatitis
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演題番号20 |
座長名:田中 正則(弘前市立病院臨床検査科病理)
演者診断名:Inflammatory pseudotumor
討議内容:
鑑別診断として,inflammatory myofibroblastic tumorとinflammatory pseudotumorがある.抗生剤に反応してtumorが縮小したことなどから,反応性・炎症性性格を有するinflammatory pseudotumorがmost likelyであるが,腫瘍性であることを明確には否定できないので,inflammatory myofibroblastic tumorの可能性が残ることを付記したい.
最終診断名:Most likely of inflammatory pseudotumor
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演題番号21 |
座長名:田中 正則(弘前市立病院臨床検査科病理)
演者診断名:Inflammatory myofibroblastic tumor
討議内容:
大型のganglion cell-likeの細胞があるが,神経マーカー陰性であった.本例はα-SMAなどは陰性で,vimentinとALKが陽性を示すのみである.虫垂原発のinflammatory myofibroblastic tumorと診断し,malignantの可能性があることを付記したい.
最終診断名:Inflammatory myofibroblastic tumor of the appendix
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演題番号22 |
座長名:池田 仁(函館中央病院病理検査科)
演者診断名:Endocardial fibroelastosis,Liver congestion, Fatty change (related with metabolic disease)
討議内容:
背景に代謝障害の存在を演者は考えているようだが,代謝障害を背景にしたtrabeculationの異常を伴う心の変化の可能性はないのかとの質問にフロアから,心肥大があり,endocardial fibroelastosisには心の肉眼像に様々なpatternを呈することがあることからendocardial fibroelastosisが支持された.代謝障害について今後更なる検討が望まれる.
最終診断名:Endocardial fibroelastosis,Liver congestion, Fatty change
(related with matabolic disease)
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演題番号23 |
座長名:池田 仁(函館中央病院病理検査科)
演者診断名:Sea-blue histiocytosis related with Niemann-Pick disease
討議内容:
Q:肝や脾はどうか?
A:両方とも腫大しており,histiocytosisを伴っていると考える.
最終診断名:Sea-blue histiocytosis related with Niemann-Pick disease
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演題番号24 |
座長名:池田 仁(函館中央病院病理検査科)
演者診断名:2,3-dihydroxyadenine urolithiasis (in a patient with APRT deficiency, homozygous)
討議内容:
Q1:APRT欠損症は日本人固有か?
A1:ほとんどが日本人,朝鮮半島に少数あり.
Q2:このような場合どのように臨床へ伝えるべきか?
A2:尿検査が特徴的なので,その結果・意義を十分理解した上で治療をするように臨床へ注意を喚起する.
最終診断名:2.3-dihydroxyadenine urolithiasis
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演題番号25 |
座長名:江村 巌(長岡赤十字病院中央検査部病理)
演者診断名:Extraabdominal desmoid tumor
討議内容:
1. 免疫染色:β-catenin (+)
2. 遺伝子検索:
質問
武山:Elastofibromaか
演者:そうでない
座長:Mitosis 1・2/10HPFはいかに
演者:Desmoid tumorでも出る
最終診断名:Extraabdominal desmoid tumor
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演題番号26 |
座長名:江村 巌(長岡赤十字病院中央検査部病理)
演者診断名:MPNST with focal epithelioid differentiation
討議内容:
組織:biphasic pattern(+)
免疫染色:S-100(+), keratin(+), EMA(-)
遺伝子検索:SYT/SSX(-)
最終診断名:MPNST with focal epithelioid differentiation
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演題番号27 |
座長名:江村 巌(長岡赤十字病院中央検査部病理)
演者診断名:Clear cell sarcoma
討議内容:
免疫染色:S-100(+), HMB-45(+)
初回手術の断端は:初回はmargin(+), すぐにcurative wideで手術したが再発した.
手足等に発生したtumorではcurative wideで手術されず,不幸な転帰をとる症例が多い.病理医は適切な手術がなされることに留意する必要がある.
最終診断名:Clear cell sarcoma
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