第 61 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP
−TN) 抄録データベース |
演題名 |
胸椎椎弓根部に発生し,背部皮下に巨大腫瘤を形成した悪性間葉系腫瘍の1例 |
出題者および所属 |
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秋田大学医学部病理病態医学講座 分子病態学分野・腫瘍病態学分野1),
秋田大学医学部附属病院 病理部2),
秋田大学医学部神経運動器学講座 整形外科学分野3)
吉田 正行1),西川 祐司1),
東海林 琢男2),山本 洋平2),
西村 拓哉1),李 慶昌1),
吉岡 年明1),大森 泰文1),
南條 博2),岡田 恭司3),
榎本 克彦1)
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症例の概要・問題点 |
症例 |
75歳,女性 |
主訴 |
右腰痛 |
既往歴 |
卵巣嚢腫手術(30歳頃) |
臨床経過 |
8ヶ月前より右腰痛が出現した.6ヶ月前より排尿困難,側胸部痛,
下肢脱力が生じ,秋田大学医学部附属病院整形外科を受診.MRI等
の画像診断で,第7胸椎右椎弓根付近に腫瘤が見出され,同月腫瘍
切除および椎弓切除が行われた.手術後,放射線療法
(2Gyx6, total 12Gy)が行われたが,腫瘍が再発し,両下肢の対麻痺
が出現した.その後も腫瘍が増大し,背部皮下に巨大な腫瘤を形成し
た.最終的に多発肺転移と胸水貯留による呼吸不全により永眠され,
剖検が行われた.
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剖検肉眼所見 |
第7胸椎から背部皮下組織にかけて,25x15x7cm大の柔らかい腫瘤性
病変が認められた.腫瘍の割面は灰白色,一部半透明で広範な壊死
を伴っており,内部に大小の嚢胞が形成されていた.嚢胞内には無
色透明な漿液が含まれていた.脊髄は腫瘍によって圧迫され萎縮し
ていた.腫瘍は第6,7,8胸椎,周囲の筋組織,脂肪組織内に浸潤して
いた.また両側肺への多発転移がみられた.
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配布標本 |
剖検時採取した腫瘍組織,1. 第7胸椎(脊髄を含む),2. 背部皮下 |
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問題点 |
組織診断
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最終病理診断 |
Malignant peripheral nerve sheath tumor
(MPNST) with focal epithelioid differentiation |
コメント |
紡錘形細胞が高密度または低密度に不規則に増殖する悪性腫瘍で,一部の細胞はS-100陽性であり,MPNSTが最も疑われた.腫瘍内に大小の嚢胞とそれらを裏打ちする上皮様配列が認められ,synovial sarcomaとの鑑別が問題となったが,SYT-SSX遺伝子発現は検出されなかった.上皮様細胞と紡錘形細胞の一部はcytokeratin陽性であったが,EMAやchromogranin A陰性で,本腫瘍は局所的に不完全な上皮様分化を伴うMPNSTと考えられた. |
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