第 61 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 16 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 造血器 骨髄
演題名 汎血球減少及びdry tapを呈し,骨髄生検を施行した一例
出題者および所属
宮城県立こども病院臨床病理科1),同 血液腫瘍科2)
武山 淳二1),星 能元2)
佐藤 篤2),今泉 益栄2)
症例の概要・問題点
症例は2歳の女児.
発熱にて発症.第7病日に発熱が続くため血液検査を
施行したところ,
WBC 1000 /μl, Hb 9.1 g/dl, Plt 6.8×104 /μlであった.
血液像ではblastは認めず,ほとんどがリンパ球であった.
第10病日に骨髄穿刺を施行したがdry tapであったため,
骨髄生検を施行した.代表的な組織像を写真に示す.
病理組織学的所見
脂肪髄を欠いた骨髄であるが,一様な過形成髄ではなく,
細胞成分が密な部分と疎な部分とが斑状に存在していた.
構成している細胞は全体に多彩であり,正常と思われる赤
芽球のクラスターや,巨核球も散見された.免疫染色を施
行したところ,最も優勢に増生しているのはB cell系リンパ
球であったが,T cell系リンパ球や組織球も多数混在して
いた.なお,CTでは明らかな腫瘤性病変は見つからなかった.

問題点 病理組織診断は?
最終病理診断 Early phase of common ALL (Transient pancytopenia preceding ALL): bone marrow.
演者コメント 初回から5週間後の骨髄検査(3回目)で ALLと確定診断し得た.呈示した初回の生検組織は retrospective にその初期像であると判断されたが,細胞成分が全体的に多彩で,芽球の増生が優勢でなく,この時点で ALL と確定診断することは困難であった.脂肪成分に乏しい,reticulin fiberが増生した間質や,タッチスメア標本に芽球が存在していたことなどが特徴的所見であった.
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