第 61 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 10 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 副腎,傍神経節 副腎
演題名 副腎皮質腫瘍の一例
出題者および所属
山形大学医学部発達生体防御学講座 病理病態学分野1),三友堂病院外科2)

大竹 浩也1),前田 邦彦1),山川 光徳1)
川村 博志2),松嵜 正實2),大道寺 浩一2),
横山 英一2),矢野 充泰2)
症例の概要・問題点
症例 69歳,男性
既往歴 54歳,胃癌のため胃全摘術を受ける.
66歳,総胆管結石にて胆嚢摘出術を受ける.
現病歴
2005年1月27日イレウスのために近くの病院へ入院し,
精査を受けた.腹部CTにて左副腎腫瘍の存在を指摘さ
れた.高血圧やホルモン異常を疑わせる症状は見られ
なかった.一般血液生化学検査では,耐糖能異常を除
き異常は認められなかった.早朝採血により得られた
血中ホルモン濃度は以下の通り,すべて正常範囲であ
った.

コルチゾール 8.6 μg/dl, ACTH 18.9 pg/ml,
アルドステロン 4.9 ng/dl, アドレナリン 10 pg/ml,
ノルアドレナリン 150 pg/ml.

2005年2月24日に左副腎摘出術を施行された.副腎は,
腎臓からの剥離は容易であったが,脾臓側の腹膜と膵
尾部への癒着が見られた.
肉眼所見
腫瘤は被膜で覆われ,大きさは75x60x45mm.
割面は白色で多結節性であった.出血巣,壊死巣が認められた.
配布標本 切除標本

問題点 病理診断について
最終病理診断 Oncocytic adrenocortical carcinoma
コメント 副腎皮質のoncocytic tumorである. HE染色では好酸性で顆粒状の細胞質を持つ腫瘍細胞の増殖を認める(図1).抗ミトコンドリア抗体を用いた免疫染色(図2)により,胞体内に充満するミトコンドリアの存在が確認された.悪性度の診断には注意が必要で,良性であってもWeissの診断基準では悪性と判定されることがある.我々はBiscegliaらの診断基準に基づき,異型核分裂像(図3)の存在から悪性であると判断した.
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