第 61 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 09 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 口腔,咽頭
演題名 歯肉腫瘍
出題者および所属
奥羽大学歯学部口腔病態解析制御学講座 口腔病理学1)
同 口腔外科学講座口腔外科学2)

伊東 博司1),杉浦 淳子1)
櫻井 裕子1),小板橋 勉2),山崎 章
症例の概要・問題点
症例 60歳,女性
既往歴・家族歴 特記すべき事項なし
現病歴
某年11月頃から上顎左側大臼歯部における腫瘤形成を
自覚していた.翌年2月に同部第2大臼歯が自然脱落し,
その後,腫瘤が増大傾向を示したため,3月に某歯科医
院を受診した.この時,上顎左側第1大臼歯後方に大き
さ15mmx20mmの腫瘤形成が見られた.同歯科医院より精
査を勧められたため,5月6日に某大学附属病院口腔外
科を受診した.口腔外科受診時には,左側の上顎歯槽
突起最後方部から第1大臼歯部歯肉にかけて広がる
28x30mm大の腫瘤が見いだされ,腫瘤表面は白色苔状物
で覆われていた.また,左側顎下リンパ節は拇指頭大
に腫大し,X線的には腫瘤部の上顎骨が吸収されていた.
5月16日に腫瘤切除術が行われた.
摘出物肉眼所見
切除された腫瘤の大きさは25x30x20mmで,腫瘤の前方
部分は第1大臼歯を取り巻き,腫瘤表面は広範にわた
り潰瘍に陥っていた.腫瘤割面では,周囲との境界が
比較的明瞭な灰白色充実性病変が見られた.腫瘤後方
部の割面(配布標本)には長径1.5mm大の暗褐色領域が観
察された.

問題点 組織診断
最終病理診断 Malignant melanoma, amelanotic: gingiva.
演者診断 Malignant melanoma
組織所見 腫瘤内には腫瘍細胞のシート状増殖が観察された.腫瘍細胞は類円形ないしは多角形で,腫瘍細胞核には明瞭な核小体が見いだされた.ごく一部の腫瘍細胞がフォンタナ・マッソン染色で陽性であった.免疫染色では,腫瘍細胞の多くがvimentin・S100タンパク・HMB45のいずれにも陽性で,少数の腫瘍細胞にはdesminあるいはcytokeratin20の陽性反応が見られた.
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肉眼像 HE

画像3 画像4
S-100 HMB45