第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
座長総括 01
演題名 第60回日本病理学会東北支部学術集会座長総括
症例の概要・問題点

演題番号1

座長総括
討議内容:

腫瘤は真皮深層から皮下組織にかけてみられた.線維芽細胞様の紡錘形細胞が増殖しており,ところどころperinecrotic palisadingの像がみられた.免疫染色の結果から紡錘形細胞は組織球由来と考えられた.鑑別疾患として小児軟部組織に発生する紡錘形細胞の腫瘍性ならびに増殖性病変がいくつか挙げられたが,組織学的にperinecrotic palisadingを特徴とする病変として、granuloma annulareと診断された. 細胞増殖が活発であることが窺われたが,異型性に乏しく,良性の反応性病変と考えられた.

病理診断:Granuloma annulare, subcutaneous.

(座長:佐熊 勉 岩手県立中央病院病理科)


演題番号2

座長総括
討議内容:

真皮上層に主座をおくsmall cell carcinoma類似の腫瘍で,ところどころ扁平上皮への分化がみられた.免疫組織学的に神経内分泌細胞への分化が窺われ,また,cytokeratin 20は扁平上皮への分化を示す腫瘍細胞に陽性であったが,small cellの多くは陰性だった.演者らは,本疾患は表皮と不連続でcytokeratin 20陰性であり,Merker cell由来が考えられにくいとの理由からsmall cell neurondocrine carcinomaと診断した. これに対してフロアからは,表皮との不連続性については付属器のMerkel cell由来であれば矛盾しないとの指摘もなされた.Merkel cellとの関連については今後の検討を待ちたい.

病理診断:
Small cell neuroendocrin carcinoma of the skin

(座長:佐熊 勉 岩手県立中央病院病理科)


演題番号3

座長総括
討議内容:

Squamous cell carcinoma in situの病変の中心部に,隆起性潰瘍性病変を形成した Merkel cell carcinomaがみられ,両者は近接しているものの明らかな連続性・移行性は認められなかった.演者らは本病変の病理発生について考察し,皮膚の幹細胞が表皮細胞およびMerkel細胞に分化した段階でそれぞれ癌化し,背景組織にはsolar elastosisがみられることより日光暴露が両者の癌化の原因ではないかと推測している.

病理診断:
Merkel cell carcinoma with squamous cell carcinoma in situ.

(座長:佐熊 勉 岩手県立中央病院)


演題番号4

座長総括
討議内容:

S-100 protein, vimentin, fascin, DC-SIGN, DC-LAMPが陽性で樹状細胞系の腫瘍と考えられ,CD1a, CD21, CD35が陰性で,Langerhans cell sarcoma, Langerhans cell histiocytosis, follicular dendritic cell sarcomaが否定的,また,Ki-67 index=24%でリンパ球系マーカー,骨髄細胞系マーカーと上皮系マーカー,HMB-45も発現していなかったことから,interdigitating cell sarcoma 合指状樹状細胞(IDC)肉腫であった.

会員の投票結果:

Undifferentiated carcinoma+rhabdoid feature/rhabdoid cell-like, Malignant rhabdoid tumor, Myoepithelioma malignant, Rhabdomyosarcoma pleomorphic, Rhabdomyosarcoma alveolar, Anaplastic large cell lymphoma, Malignant oncocytoma, Angiosarcoma epithelioid type, Malignant melanomaが挙げられた.

座長コメント:

HE所見では一見明確な胞巣を成していて上皮性腫瘍を思わせるが,LCA(?), cytokeratin(AE1/AE3)(?)でHHF(?)であって,alveolar rhabdomyosariomaやalveolar soft part sarcomaが考えられた.?演者らはIDCの特染を中心に極めて稀な症例を論じているが、現病歴で初生検の約5ヶ月前に左耳下部打撲歴とそれ以後腫脹を自覚とのことであったが、本症との解剖的局在の一致や外傷の程度や治療の内容が記述されていない点,?画像診断と穿刺吸引細胞診での悪性腫瘍の疑いのもとに左耳下腺全摘と頸部郭清術を施行した際の2?大の弾性硬わずかに可動性な腫瘤とのことであってリンパ節構成成分の節内病変か,特に胸鎖乳突筋隣接の皮下などに発現した節外の芽中心(胚中心)構成細胞かをお尋ねしたが確認されていない.

(座長:片桐 正隆 日本歯科大学新潟歯学部口腔病理)


演題番号5

座長総括
討議内容:

グリコーゲン顆粒を有する淡明細胞と脂腺分化傾向の存在を認めながら,細胞異型ほ全体的に乏しいと解釈され,形態的と免疫組織学的(2相性で外側の細胞はS-100, SMA陽性で,内側の細胞はEMA, CAM5.2陽性)にepithelial myoepitheliai carcinomaであった. 会員の投票結果 Epithelial-myoepithelial carcinoma, Myoepithelial neoplasm, Myoepithelial carcinoma, Adenosisi, Adenocarcinoma, NOS, Sebaceous adenocarcinoma, Hamortomaで挙げられた.

病理診断:
胞体の明るいclear cellの増殖を主体とし、腺管構造、血管腔や一部に皮脂腺化を認め被膜形式(?)で、clear cell adenocarcinoma(Sebaceous carcinoma, Acinic cell carinoma), Clear cell variantなども考えられる.

(座長:片桐 正隆 日本歯科大学新潟歯学部口腔病理)


演題番号6

座長総括
討議内容:

Epithelial myoepithelial carcinoma, Spindle cell type(紡錘形筋上優位)で、悪性像がないと判断できればMyoepithelial carcinoma in pleomorphic adenoma, non invasiveとの考えであった.

会員の投票結果:

Plemorphic adenoma, SCC ex, Plemophic adenoma, Malignant myoepithelooma (arised in plemorphic adenoma), Benign mixed tumor with a markedly hypercellular area, Mixed tumor + myoepitheliomaであった.

病理診断:

HE染色所見での上記のPlemorphic adenoma, SCC ex, Plemorphic adenoma, Malignant pleomorphic adenoma (PA)との類似性と関連性は否定しないが,免疫染色でのS-100蛋白(+), GFS(+)から,腺管構造の他にcellularityが高い部分やmyxoidな部など多彩な組織像を示し,被膜破壊と周囲脂肪織への侵食増殖なその態度から,PA myoepthelial predominant type, PAやpolymorphous low-grade adenocarcinomaとか考え,私はむしろこれらとの鑑別を必要とする症例と考えている.

(座長:片桐 正隆 日本歯科大学新潟歯学部口腔病理)


演題番号7

座長総括
討議内容:

Low grade fibromyxoid sarcomaとのHE上の鑑別は?
 核異型をもう少しとる.
 Myxoid featureをとる.
Low grade fibromyxoid sarcomaでは,fibrousとmyxoidが鑑別点.Myxoidが地図状にあるのが特徴.β-cateninが鑑別に有効か.β-cateninはdesmoid診断に有効とされている.

病理診断:
Intra-abdominal desmoid

(座長:渡辺 みか 東北大学病院病理部)


演題番号8

座長総括
討議内容:

最初のopeと二回目のopeの摘出されたものの関連は?
→初回とり残されていたものがセリ上がってきた.
Ki-67は1%以下
悪性度についてもよいのではないか.
以前phyllodesと言われていたものが→PSPUMP PSSという短い呼び名名で.

病理診断:
Prostatic stromal proliferation of uncertain malignant potentinal

(座長:渡辺 みか 東北大学病院病理部)


演題番号9

座長総括
討議内容:

HEでの診断は難しいのか.
→よくみればpalisadingの様にもみえるがHEでは難しい.
キメラ遺伝子素の再現性は凍結ではよいが,パラフィンではバラついて難しい.生検のときにfrozenをとっておいた方がよい.

病理診断:

Alveolar rhabdomyosarcoma, solid variant

(座長:渡辺 みか 東北大学病院病理部)


演題番号10

座長総括
討議内容:

質問:分枝細胞がみられ,アスペルギルスとは形態が異なるのではないか?
回答:アスペルギルスとは同様の形態を示し,HEやグロコット染色では鑑別できない.
菌培養のコロニー形態によって鑑別が可能である.
アスペルギルス抗原に対する免疫染色では陰性を示す.特異抗体やPCRによる同定はまだ行われていない.

病理診断:

症例1:Pseudoallescheriaによる肺真菌症
症例2:Scedosporiumによる肺真菌症
    (PseudoallescheriaとScedosporiumは同じ真菌)

(座長:杉野 隆 福島県立医科大学医学部病理学第二講座)


演題番号11

座長総括
討議内容:

臨床経過やHMB45陽性の筋系細胞の存在などから早期のLAM病変である可能性が高い.LAMの発生母地や発生メカニズム,弾性板の断裂や肺胞壁の破裂など気腫性変化との関連を調べるのに興味深い症例である.

病理診断:
Lymphangiomyomatosis (LAM)

(座長:杉野 隆 福島県立医科大学医学部病理学第二講座)


演題番号12
座長総括 討議内容:
Micronodular pneumocyte hyperplasisについて
  Sclerosing hemangiomaとの鑑別が必要である.
  Atypical adenomatous hyperplasia様の病変は初期病変の可能性があるのでは?

LAMについて
父親が結節性硬化症で肺癌とのことだが,肺病変は結節性硬化症関連の病変であった可能性はないのか?本症例でのTSC関連遺伝子(TSC1,2)の変異などとの関連が興味深い.

病理診断:

Micronodular pneumocyte hyperplasis
Lymphangiomyomatosis(LAM)

(座長:杉野 隆 福島県立医科大学医学部病理学第二講座)


演題番号13

座長総括
討議内容:

Question:
従来solid adenocarcinoma with mucinという疾患に相似するのではないか?
(山形大 本山先生)
Answer:
やはりその組織像といわれていたものではないか.(演者)
Comment: Micropapillaryにgrowthし,また肺胞内に広がる像をみとめ,このような像がみられる場合予後不良との報告あり,診断に併記すべきであるとの提言あり.(演者)

病理診断:

Signet-ring cell carcinoma of lung with papillary adenocarcinoma

(座長:小松 正代 山本組合総合病院病理)


演題番号14

座長総括
討議内容:

演者よりはcytokeatn(-), EMA(-), S-100(-), synaptophysin(+), chromoganin(+)のparagangliomaと考えている.Mitosisは2個/10HPF, ki-67 5%のlow grade malignant tumorと考えている.
Question:
両側に発生する症例が多いかどうか(東北労災病院 病理 木村先生)→本例は片側性である
近接の群脈周囲には病変があるかどうか(東北労災病院 病理 木村先生)→みられていない

病理診断:
Paraganglioma

(座長名:小松 正代 山本組合総合病院病理)


演題番号15

座長総括
討議内容:

Question:

Thymona type B2ないしB3, Cとの鑑別についてはどうか.
→MIC2(-), CD5(+), c-kit(+), bcl-2(+)でthymic carcinomaに近い病変と考えている.c-kitが鑑別に有用であった.

Thyroid gland由来の病変なのかどうか.
→Thyroid glandの病変と考えている.第3咽頭嚢由来の病変ではないかと考えている.
演者よりneuroendocrine nature(synaptophysin(+))のCASTLEは報告例がないが,上記免疫染色よりthymomaではなく,thymic carcinomaに近いcarcinoma showing thymsu-like differentiationと考えている.

病理診断:

Carcinoma showing thymus-like differentiation (CASTLE)

(座長名:小松 正代 山本組合総合病院病理)


演題番号16

座長総括
討議内容:

・心筋の空胞化が顕著であり,代謝障害を否定する必要がある.
・線維素性心外膜炎が顕著な原因の説明がつくか.
・心筋症より心筋障害とした方がよい.

病理診断:

たこつぼ心筋障害(英語名なし)

(座長:黒瀬 顕 岩手医科大学医学部病理学第一講座)


演題番号17
座長総括 討議内容:
・好酸球浸潤が非常に強い点は?→演者:本症に合致する.
・肝の肉芽病変から回虫症を考えなくてよいか.→演者:本症に伴った炎症性偽腫瘍とし て矛盾しない.

病理診断:

IgG4-related autoimmune pancreatitis (IgG4-related autoimmune disease)

(座長:黒瀬 顕 岩手医科大学医学部病理学第一講座)


演題番号18

座長総括
討議内容:

・全体が神経内分泌腫瘍なのか,それともductal carcinomaの一部に神経内分泌腫瘍がみられるのか?
→演者:ductal carcinomaの一部にneuroendocrine featureを示す部を伴っている.

病理診断:

Invasive ductal carcinoma with neuroendocrin features

(座長:黒瀬 顕 岩手医科大学医学部病理学第一講座)


演題番号19

座長総括
討議内容:

脂肪肉腫との鑑別:
異型細胞は脂肪(-),アルシャンブルー(+)でpseudolipoblastと考えた.MPNST(malignant peripheral nerve sheath tumor)との鑑別:palisadingは部分的,S-100蛋白(-).

病理診断:
  Enzinger: Myxoid MFH, Grade 2.
  WHO: Myxofibrosarcoma, intermediate.

(座長:深瀬 真之 鶴岡市立荘内病院病理科)


演題番号20

座長総括
討議内容:

演者診断:Endometrial stromal sarcoma + leiomyosarcoma
Endometrial stromal sarcoma:CD10(+), SMA(-).
Leiomyosarcoma :SMA(+), CD10(-).

病理診断:
Endometrial stromal sarcoma +Bizarre leiomyoma

(座長:深瀬 真之 鶴岡市立荘内病院病理科)


演題番号21

座長総括
討議内容:

セルトリ細胞腫瘍,Adenomatoid tumor,Granulosa cell tumorなどとの鑑別に注意(特にovaryに発生した場合)

病理診断:

Tumor of probably wolffian origin (Wolffian adnexal tumor)

(座長:深瀬 真之 鶴岡市立荘内病院病理科)


演題番号22

座長総括
討議内容:

・von Recklinghausen病で同様の症例の経験有りとのコメント有り(深瀬)
・PTAH染色の意義に対する質問 血栓症がprimaryに生じたのではないことの証明
・演者の考察 von Recklinghausen病では、文献的に3.6%で(決して多くはないが)vascular lesion(+)で,vascular stenosis & aneurysm がみられる.

病理診断:

von Recklinghausen病に伴う血管脆弱性+外傷→血管(静脈)損傷のための出血(血管脆弱性はS-100陽性細胞が血管壁内に存在することが原因と考えられる)

(座長:鬼島 宏 弘前大学医学部病理学第二講座)


演題番号23

座長総括
討議内容:

・Respiratory syncytial virus感染症としては感染部位が非典型的であり、臨床的にも本症を疑うことが困難であった.

文献的:乳幼児,細気管支に感染,重症
      小児,中枢の気道に感染,軽症
本例:小児,中枢気道感染,重症化
臨床的に疑われればRS virusに対する検査を行えたが,病理組織としても核封入体は認められるが,多核細胞はほとんど見えなかった.脳の検索も行ったが,明らかな異常はみられなかった.

病理診断:
Respiratory syncytial virusの気道上皮感染

(座長:鬼島 宏 弘前大学医学部病理学第二講座)


演題番号24

座長総括
討議内容:

・肺癌(lunge cell carcinoma)の転移として良いと思う。
 肺癌の腸管(小腸)転移.
 狭窄や穿孔をきたしうる.
・小腸にprimaryがあるという意見は出なかった(フロアよりは).
・術後PET
 腹腔内 uptake(++) = metastasis(++)
 肺腫瘍 uptake(-)→irradiationが効果的であったと考えたい.

病理診断:
肺癌の回腸転移 Metastasis of lung undifferentiated large cell carcinoma

(座長:鬼島 宏 弘前大学医学部病理学第二講座)


演題番号25

座長総括
討議内容:

? 腫瘍の局在部位についての確認
? Thymoma type C かcombined thymoma B3+Cか?

病理診断:
Thymoma B3+C, compatible.

(座長:山川 光徳 山形大学医学部 発達生体防御学講座 病理病態学分野)


演題番号26

座長総括
討議内容:

? このような髄膜炎は画像診断で診断可能か?
→ MRIで診断可能になっている。

病理診断:
Hemophilus influenzae infection
Septic shock

(座長:山川 光徳 山形大学医学部 発達生体防御学講座 病理病態学分野)


演題番号27

座長総括
討議内容:

? 骨髄における造血細胞の過形成がみられるが,その意義は? 骨髄線維症に典型的なfibrotic areaと造血細胞の過形成を示すareaの分布はどうなっていたか?
? 血液疾患の場合には,複数個の骨(骨髄)を検討して,そのマクロ像も提示して欲しい.

病理診断:
Chronic idiopathic myelofibrosis
AML M1 or M2

(座長:山川 光徳 山形大学医学部 発達生体防御学講座 病理病態学分野)