第 55 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 12 区分 B(典型的)
部位/臓器 造血器 骨髄
演題名 Mastocytosisが疑われた一剖検例
出題者および所属
秋田大学医学部第一病理学講座
吉田正行,西川祐司,渡辺斉,山本洋平,西村拓哉,東海林琢男,大森泰文,榎本克彦
秋田大学医学部第三内科
吉岡智子,渡辺敦,高橋直人,三浦偉久男,澤田賢一
症例の概要・問題点
症例 52才女性
既往歴 28歳,右卵巣嚢腫切除;
40歳.虫垂切除,IgA腎症;
45歳,子宮筋腫のため子宮全摘.
現病歴 平成13年9月上旬38℃台の発熱と蕁麻疹様皮疹が出現し,近医に入院した。
9月下旬
   汎血球減少症(白血球,2400/μl; Hb, 8.7g/dl; 血小板,74000/μl)
   好酸球増多症(32%)
骨髄での血球貪食がみられ.精査加療のため秋田大学第三内科に紹介された。

入院時検査 末梢血:白血球 5400/μl(前骨髄球, 0%; 骨髄球, 5%; 後骨髄球,0%, 杆状球,15%,
分葉球,69%; 好酸球,1%; 好塩基球,0%; 単球,2%; リンパ球,8%; 異型細胞,<5%);
Hb, 7.8g/dl; 血小板,58000/μl; AST, 11U/l; ALT, 15U/l; LDH, 254U/l; ALP, 363U/l;
BUN, 71.8mg/dl; クレアチニン, 4.8mg/dl; Na, 134mEq/l; K, 5.2mEq/l; Cl, 99mEq/l,
Ca, 7.5mg/dl; s-IL2-R, 25400U/ml; 血中ヒスタミン, 690nM; 尿中ヒスタミン, 4500nM.
骨髄穿刺:骨髄有核細胞数,34500/μl; 骨髄巨核球,異常なし; M/E比,8.25;
異型細胞,59.6%(トルイジン・ブルー染色でmetachromasia陽性).
骨髄異型細胞表面マーカー:CD1(-), CD2(+), CD3(-), CD4(-), CD5(-), CD7(-),
CD8(-), CD10(-), CD11b(±), CD13(+), CD14(-), CD19(-), CD20(-), CD25(+), CD33(-),
CD34(-), CD41(-), CD56(-), CD117(+), GPA(-), HLA-DR(±).

入院後経過 10月10日より,急性骨髄性白血病に準じて寛解導入療法(cytarabine, idarubicin)を行った.
終了後の骨髄穿刺で異型細胞の残存が確認されたため,同薬剤で追加療法を行った.
この頃から肝脾腫が増大し,低蛋白血症,浮腫が増悪した.追加療法終了後の骨髄穿刺では,
骨髄の大部分が異型細胞で置換されていた.経過中,末梢血中にも異型細胞はみられたが,
有核細胞に対する割合は5%を超えなかった.その後,敗血症,肝機能低下,腎機能低下,
腹水貯留をきたし,11月7日に死亡し,1時間30分後に病理解剖が行われた。
剖検時肉眼所見 肝臓(2100g),脾臓(915g),淡血性腹水(2200ml),大動脈周囲リンパ節の軽度の腫脹,
貧血性骨髄,消化管(食道,胃,十二指腸,回盲部,結腸)の多発性潰瘍.

問題点 病理診断について.
最終病理診断 Mast cell leukemia

配布標本 剖検時に採取した肝組織および脾組織の一部.
画像1 画像2

画像3