第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 26 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 その他(全身性)
演題名 Hemophilus influenzaeによる敗血症性ショックの1剖検例
出題者および所属
北村 洋1  大藤高志2  熊谷勝政2 
千崎久美子2  今野律子2 
田所慶一1  植木紳夫1
1 みやぎ県南中核病院消化器科  2同病理科
症例の概要・問題点
症例 72歳 男性
家族歴 特記すべきことなし
既往歴 高血圧治療中
現病歴
真夏、青森県から群馬県ヘスクーター一人旅の途中で、入院3日前から
近くの旅館に宿泊中であった。この間、頭が痛いと云っていたのを
従業員が聞いている。当日の朝起きて来ず、3桁の意識障害の状態で
発見され直ちに当院に救急搬送された。頭部CTで出血性病変、
梗塞性病変を含め著変を認めず。
血液化学で白血球増多、貧血、肝機能障害が高度、CK, BUN, CR, CRPいずれも高値。
血液ガスは乳酸アシドーシス。熱中症による多臓器機能障害が強く疑われ
対症療法がなされたが、意識障害の改善もないまま第9病目に亡くなり剖検された。
血液培養はされていない。
剖検所見
1.主病変は急性化膿性髄膜炎(膿からhemophilus influenzaeを同定。脳重1450g)。
  脳室炎も強い。
2.副病変は敗血症性ショックでまとめられる多臓器傷害。
  肝(1050g)の小葉中心性急性出血性壊死、肺浮腫(780;730g)が顕著で、
  腹水(160ml)、胸水(1150;1050ml)、心嚢液(30ml)は漿液性。
  腎(130;120g)の急性尿細管壊死高度。
3.心(450g)は求心性肥大。
出題意図
血液培養はなされなかったが、多臓器病変は、急性化膿性髄膜炎による
敗血症性ショックでまとめられると考えられた。
本例が臨床症状と臓器病変との関連を考える上で重要だと思い供覧する。
7月31日 8月2日 8月6日 基準値
WBC 171 151 169 39・98X102/μl
PLT 18.6 13.7 11.7 13.1X104/μl
ALT 4,350 567 121 10・40 IU/l
AST 1,306 563 178 5・40 IU/l
ALP 483 364 359 115・359 IU/l
LDH 7,790 398 343 115・245 IU/l
γ-GTP 37 36 44 70以下 IU/l
CK 1,173 896 211 57・197 IU/l
BUN 65 57.4 56 6・20 mg/dl
CRE 2.65 1.57 1.72 0.61・1.04mg/dl
CRP定量 20.08 11.24 12.27 0.30以下 mg/dl

最終病理診断
演者診断:Hemophilus influenzaeによる急性化膿性髄膜炎
          敗血症性ショック