第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 25 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 縦隔,胸腺
演題名 剖検の結果、心臓腫瘍ではなくて悪性胸腺腫瘍であった1例
出題者および所属
宮地智洋1  大藤高志2  千崎久美子2 
熊谷勝政2  今野律子2  及川仁元1
井上寛一1  小山二郎1  手塚文明3
1 みやぎ県南中核病院循環器科 
2同病理科 
3国立病院機構仙台医療センター
症例の概要・問題点
症例 70歳6ヶ月 女性
家族歴 特になし
既往歴 10歳 脊椎カリエス、44歳 子宮全摘(筋腫)、50歳 胆摘(結石)
現病歴
死亡するおよそ1年1ヶ月前に息切れを主訴として受診以来、死亡156日前に
当院に救急搬送されるまで都合4施設で加療されている。
当院ではIVH下に心不全の治療が開始されたが、数日後に突然ショック状態となった。
造影CT下に右心房から右心室を占める大きな腫瘤が発見され、心臓腫瘍の疑いで
149日前に仙台医療センターに転院し即日緊急手術され、SVCから右房内を占める
腫瘍が摘出された。
83日前に当院に戻り状態がほぼ安定した32日前に退院し在宅介護となった。
13日前に呼吸困難が強まり当院第2回入院となったが、心臓内腫瘍は増大し
上大静脈症侯群も強まり、状態の改善のないまま亡くなり剖検された。
剖検所見
1.悪性胸腺腫瘍の術後再発。
  右心臓前面に6x5cmほどの腫瘍増殖巣があり、SVCに直接浸潤し内腔を完全に閉塞。
2.高度の癌性心外膜炎。
  多数の結節性心筋内浸潤を伴うが、心房内、心室内に腫瘍を認めず。
3.右肺門部結節性浸潤、左右臓側胸膜下転移、右壁側胸膜転移、肝転移あり。
4.分泌物による気道内腔完全閉塞。
悪性胸腺腫瘍の組織像
1.リンパ球との関係が濃い結節性増殖。壊死が多発。
  索状配列優位の腫瘍細胞の一部は扁平上皮様。明細胞領域あり。
2.腫瘍細胞はびまん性にcytokeratin陽性、一部CD117, CD56, EMA陽性。
  リンパ球はCD45, CD3, CD8陽性、CD20とCD79α陽性細胞は極く少数。
本例供覧の目的 心臓腫瘍ではなくて悪性胸腺腫瘍であったが、組織型は何か?

最終病理診断 演者診断:Combined thymoma, type B2 and B3 with SCC component