第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 22 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 心,血管系 血管
演題名 顔面打撲5日後に右血胸で死亡した1例
出題者および所属
川崎 隆1、長谷川 剛2、内藤 眞1
新潟大学大学院医歯学総合研究科、
細胞機能講座分子細胞病理学分野1
器官制御医学講座病理形態学分野2
症例の概要・問題点
症例 43歳男性 カッター工
臨床診断 頚椎脱臼疑い
家族歴 特になし
既往歴 特になし
現病歴
平成16年6月9日夜間、飲酒後自転車に乗り、側溝に転落して顔面を打撲した。
6月10日に外来を受診し、6月11日に安静と精査を目的に入院した。
血液検査では、軽度の脱水傾向の他に異常は見られなかった。
画像検査(胸部X-P,頸部CT,MRI)では、後咽頭から気管支後腔に出血が見られた。
また、頚椎に損傷は見られなかった。
ベッド上安静の指示で経過を見たところ6月14日朝6時半頃心肺停止で発見された。
蘇生を試みたが死亡が確認された。
剖検時所見
顔面には、打撲痕とむくみが見られた。
下腹部には、cafe-au-lait spotが多発していた。
後咽頭腔から右腕頭動脈周囲に高度の出血(凝血塊)が見られた。
右胸腔内には、血性胸水が1400ml貯留し、一部凝固していた。
頸部の主幹動脈に明らかな損傷は見られなかった。
配布組織 右腕頭動脈と周囲組織

問題点 出血の原因について
最終病理診断
演者診断:頚静脈過伸展に伴う破綻性出血による右血胸・基礎に
          NF1に伴う神経線維腫の動・静脈周囲および一部壁への
          進展による血管の脆弱性あり。
画像の説明 図1 右鎖骨下動脈周囲の小静脈に出血が見られた.静脈周囲と一部血管の筋層内には炎症細胞とは異なる細胞の浸潤が見られた.出血は,フィブリン血栓を伴っており,比較的新鮮な出血と考えられた.
図2 浸潤細胞は,小型で核異型に乏しい細胞であった.
図3 浸潤細胞は,S-100蛋白に陽性であった.
図4 浸潤細胞は,SMAには陰性で血管壁の平滑筋細胞とは異なる細胞であった.
画像1 画像2

画像3 画像4