第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 16 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 心,血管系 心
演題名 心不全治療中にたこつぼ心筋症様病態を呈し、血行動態の急激な悪化により死亡した一例
出題者および所属
二階堂雄文(研修医)1)、高舘達之(研修医)1)
小松宣夫1)、浅野重之2)
1) いわき市立総合磐城共立病院循環器科,
2) 同 病理科
症例の概要・問題点
症例 78歳、女性
主訴 顔面浮腫、咳嗽、尿量減少
家族歴 特記すべき事なし
既往歴
高血圧にて近医受診中。
平成14年3月、胸痛の精査目的に心臓カテーテル検査を施行し、
狭心症は否定されたが、肥大型心筋症疑いにて近医でfollow upとなる。
平成16年3月、うっ血性心不全にて入院し、大動脈閉鎖不全症と
高血圧性心疾患と判断し、薬物治療にて症状改善し退院した。
現痛歴
平成16年5月7日、再び心不全徴候認め、
慢性心不全の急性憎悪の診断にて入院となった。
入院当日、呼吸不全、循環不全を認め、
入院3日目、胸痛症状をみとめ、
心電図上、肢誘導、胸部誘導の広い範囲にて、ST上昇を認めた。
虚血性心疾患疑いにて、緊急心臓カテーテル検査を施行したが、
冠動脈に有意な狭窄は認めず、
左室造影にてたこつぼ様心筋収縮がみられた。
たこつぼ心筋症疑いにて治療を継続し、
入院7日目頃から再び血圧低下、呼吸状態の悪化を認めた。
入院10日目には、心室頻拍出現し、さらに血圧低下も著明となり、
カテコールアミン増量するも血圧が低下し続け、入院11日目永眠。
剖検は心臓のみ快諾された。
配付標本 左心室壁

問題点
? 病理組織学的診断
? 鑑別診断
? 臨床経過と病理所見の関連
最終病理診断 演者診断:たこつぼ型心筋症(心筋障害)
 
演者コメント たこつぼ心筋症の病理報告例は少なく,特に生検でも様々な程度の障害が認められている.心臓超音波検査,左室造影検査にて特異な心室壁運動からこの疾患を疑い,剖検のマッピングなどで,心基部から心尖部にかけて障害の程度が強くなることが判明した.たこつぼ心筋症の剖検所見としては数少ない症例報告と思われる.
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