第 60 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 05 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 唾液腺
演題名 右耳下腺腫瘍の一例
出題者および所属
小松正代1)、山内美佐2)、高橋正人2)
南條 博3)、提島真人4)、増田弘毅2)
1) 山本組合総合病院病理、2) 秋田大学医学部病理病態医学講座、
3) 秋田大学医学部病院病理部、4) 市立秋田総合病院病理
症例の概要・問題点
症例 53歳、男性
既往歴 特記すべきことなし
現病歴
2年ほど前より右の耳下腺腫瘍に気がつく。平成16年10月当院耳鼻咽喉科受診した。
MRI検査では25x20mm大のmarginがirregularな腫瘍を右耳下腺に認めた。
12月に摘出手術を施行した。
肉眼所見
白色の被膜形成が認められない、境界不明瞭な4x2.5x1cm大の耳下腺を含む腫瘍であった。
配布標本
手術切除標本

問題点
病理組織診断
最終病理診断
演者診断:Epithelial-myoepithelial carcinoma: parotid gland.
演者コメント 組織学的には,腫瘍は被膜を認めず,小型の淡明異型細胞が充実性胞巣ないし,2相性の小型の腺管を形成し増殖する腫瘍であった.2相性腺管の外側の淡明な細胞はPAS陽性,SMA陽性,S-100陽性であり,筋上皮細胞の特徴を有していた.内側の細胞はEMA,CAM5.2陽性で上皮細胞の特徴を有していた.核異型は目立たず核分裂像は殆ど認められなかった.Ki-67 陽性細胞は6%程度であった.周囲組織への浸潤増殖像から低悪性度のEpithelial-myoepithelial carcinomaと診断した.Epithlial-myoepithelial carcinomaはDonathらにより1972年に報告され,新WHO分類ではlow grade malignancyのcarcinomaの一型として分類された.耳下腺を好発部位として発生し,1%程度の稀な腫瘍である.現在,手術後2ヶ月で,再発や転移は認めていない.
 
画像の説明 画像1はHE染色です.周囲組織に小型の2相性を認める腺管が浸潤性に増殖しています.
画像2はHE染色の強拡大です.外側の淡明な細胞とやや暗色の内側の細胞からなる2相性を示す腺管の増殖像が主体です.細胞は異型に乏しいです.
画像3はSMA染色です.2相性腺管の外側の細胞に陽性所見が認められます.
画像4はEMA染色です.2相性腺管の内側の細胞に陽性所見が認められます.
画像1 画像2

画像3 画像4