第 58 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 15 区分 A. 難解・問題症例
部位/臓器 軟部 胸/腹部
演題名 左肋骨周囲に発生した悪性腫瘍の1例
出題者および所属
1) 新潟大学医歯学総合研究科 細胞機能講座分子細胞病理学分野
2) 新潟大学医歯学総合研究科 遺伝子制御学講座分子診断病理学分野
3) 新潟大学医歯学総合研究科 器官制御医学講座病理形態学分野
川崎 隆1,渡辺 玄2,長谷川 剛3,内藤 眞1
症例の概要・問題点
症例 71歳 男性
主訴 腰痛,食欲低下
家族歴 兄に癌(詳細は不明)
既往歴 特になし
現病歴 平成14年9月頃から腰痛と食欲低下が出現.その後,嗄声が加わり,11月19日
に整形外科を受診し,入院となった.左第8肋骨に一致して腫瘤を認め,生検
を施行した(配布標本).
病理組織診断では,悪性腫瘍(軟部腫瘍としてはMFHが疑われた)と診断された.
MFHの治療目的に他院整形外科を受診したが,腫瘍は肋骨周囲の他,肝,甲状
腺に多発性に見られ,治療は困難と判断された.いったん退院したが,平成15
年2月に発熱,食欲低下が見られ,また腰痛が強まり,内科に入院.肺炎を認
め,抗生剤の投与を行った。また、疼痛コントロールを行った.この間,左肋
骨の腫瘍病変の生検を施行した.病理組織診断は,前回同様の所見であった.
以後、入退院を繰り返したが,肺炎と胸水による呼吸困難,貧血,肝機能障害
が進行し,平成15年9月11日に永眠された.
免疫染色 (初回生検時)AE1/AE3(-), CAM5.2(-), vimentin(+), α-SMA(-), HHF35(-),
S-100(-),HNB45(-), CD68は反応性の細胞に(+).
配布組織 左肋骨の腫瘍組織の一部(初回生検時)

問題点 病理組織診断
考察 【剖検所見】
腫瘍は,左肋骨周囲,肝,甲状腺,縦隔リンパ節に見られた.腫瘍は,境界明瞭,灰白調で出血,壊死が見られた.
【病理学的所見】
HE染色上,腫瘍は多形性に富み好酸性で広い胞体を有する細胞で,ときに多核巨細胞を混じており,周囲にはマクロファージと炎症細胞浸潤を伴っていた(HE写真??).免疫染色では,AE1/AE3(-), CAM5.2(-), EMA(-), Vimentin(+), SMA(-), HHF35(-), S-100(-), HMB45, (-), LCA(-), CD20(-), CD3(-), CD30(-), CD68は反応性の細胞に陽性であった.その後fascin(+)(HE写真?), CD21(+)(HE写真?), CD23(-), CD35(-)を確認した.電子顕微鏡では,腫瘍細胞間にdesmosome を認めた.以上の成績からfollicular dendritic cell (FDC) tumor と考えられた.軟部組織に発生した本腫瘍はまれで,免疫染色での FDC 特異的マーカーや電子顕微鏡での特徴的な所見が診断に有用であると考えられた.
最終病理診断
Follicular dendritic cell (FDC) tumor (さらなる検討を要す)
画像1 画像2
HE HE

画像3 画像4
CD21 fascin