第 58 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP
−TN) 抄録データベース |
出題者および所属 |
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1) 青森市民病院臨床病理科
2) 弘前大学医学部病理学第一講座
3) 青森市民病院第三内科
4) 青森市民病院外科
黒滝 日出一1),山田 正俊2),佐々木 義雄3),遠藤 正章4),八木橋 操六2) |
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症例の概要・問題点 |
症例 |
37歳,女性. |
主訴 |
上腹部腫瘤,心窩部痛 |
現病歴 |
半年程前に持っていたものをお腹にぶつけた際,腹部に何か丸いものがあるの
に気づいた.2ヶ月前に心窩部痛があり,腹部に腫瘤を自覚した.背臥位で圧
迫感があり,腹臥位になると脇腹が痛いため,内科受診.腹部超音波,CT検査
で膵体部に大きな腫瘤(12cmx9cmx9?)が認められ,臨床的にはsolid and
pseudopapillary tumor (solid and cystic tumor)が疑われた.外科に転科と
なり,膵体尾部切除+脾摘が施行された.
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術前検査データ |
WBC 592x13/μl, RBC 375x104/μl (380-480), HGB 10.7g/dl (11.3-14.8),
HCT 33.5% (35-45), PLt 25.1x104/μ, LD 166U/L, AST 21U/L, ALT 20U/L,
ALP 212U/L, T-Bil 0.4mg/dl, D-Bil 0.13mg/dl, γ-GTP 15U/L,
CHE 287IU/L,ZTT 12.8K・U (4-12), CK 72U/L, Lipase 691IU/L (7.1-44.9),
AMY(S) 66IU/L, AMY(U) 762IU/L, TP 8.0g/dl, Alb 4.4g/d, UN 12mg/dl,
CRE 0.64mg/dl, UA 5.3mg/dl, Cl 103mmol/L, Na 143mmol/L, K 3.79mmol/L,
Ca 9.8mg/dl, IP 3.8mg/dl, T-Cho 172mg/dl, TG 78?/dl, FBS 80mg/dl,
CRP 0.3mg/dl(<0.30), glucagon 100pg/ml, gastrin 70pg/ml, CEA 0.7ng/ml,
AFP 2.5ng/ml, Ferritin 23.0ng/ml, CA19-9 11.9U/ml, CA125 20.1U/ml,
DUPAN-2 <25 U/ml
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摘出腫瘍肉眼所見 |
膵体部から発生した腫瘍は14cmx10cmx8.5cm大で弾性やや軟,充実性で所々に
cysticな部分を認めた.腫瘍の腹側は境界明瞭であったが,背側では不明瞭で
あった.膵尾部は硬く慢性膵炎の所見を呈していた.割面では白・灰白色の充
実性の部分と出血を伴ったcysticな部分が混在していた.正常膵組織との境界
は明瞭であったが,一部不明瞭な部分も見られた.リンパ節(#6,#12a)転移(-).
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腫瘍細胞の免疫染色結果 |
AE1/3(+/-), EMA(-), insulin(-), glucagon(-), somatostatin(-), PP(-),
vimentin(+/-), NSE(+), chromogranin(-), synaptophysin(+/-), CD99(+),
PGP9.5(+/-), α1 -AT(+/-), α1-ACT(+/-), CD56(+/-), Leu 7(-), CD10(-),
CD15(-), CD30(-), CD34(-), CD68(-), S-100(-), NF(-), GFAP(-), CEA(-),
AFP(-), CA19-9(-), CD117(KIT)(-), desmin(-), α-SMA(-),
h-caldesmon(-), 34βE12(-), Ber-EP4(-), ER(-), PgR(-),
MIB-1 labeling index <5%
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配布標本 |
摘出膵腫瘍 |
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問題点 |
病理組織診断 |
病理組織所見 |
腫瘍は線維性の被膜に包まれて境界明瞭で,周囲への浸潤は明らかではなかった(図2A).N/C比大,vesicularな核に明瞭な核小体を有する細胞が毛細血管を含む狭い間質を介在しながら,シート状,充実性に増生しており,所々でartifactと考えられるcystic
changeが見られ,一部出血を伴っていた(図2B, C).またごく稀にではあるが細胞が花冠状配列(ロゼット)を示しているように見える部分があった(図2D).核分裂像は散見した(1・2/10HPF)
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電顕所見(図4) |
ホルマリン固定材料から戻し電顕を施行したが,腫瘍細胞にはミトコンドリア,粗面小胞体と少数のグリコゲン,リボソームが認められた.細胞間には所々にdesmosomal
junction様構造が散見されたが(黄矢印),明らかなdense-core granulesはほとんど見られなかった(赤矢印).
以上の所見から,膵原発のprimitive neuroectodermal tumor (PNET)が考えられた. |
最終病理診断 |
Primitive neuroectodermal tumor (PNET), synaptophysin(+), CD99(+), CD56(+). |
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