第 55 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 07
部位/臓器
演題名 長期の経過で悪性転化した肝多房性嚢胞性腫瘍
出題者および所属
下山則彦1)、大浦哲1)、石舘卓三1)、小澤正則2)
市立函館病院病理研究検査科1)、同外科2)
症例の概要・問題点
症例 67歳、女性
病歴 1990年 7月 検診腹部超音波検査で肝臓に多発嚢胞が認められた。
     10月 嚢胞は急速に増大。
1990年12月 肝右葉切除施行し肝間葉性過誤腫と組織診断した。(配布標本1:90s2236-10)
1998年    初回と画像的にほぼ同様の所見を呈する嚢胞性病変が認められ
      7月 肝切除術(配布標本2:98s1740-3)
2000年11月 同様の病変が再発したが残存肝が少なく切除不能。
         肝嚢胞に対して開窓術を施行し少量のsampleが採取され、
         2回目手術時とほぼ同様の組織所見であった。
2001年 6月 全身状態悪化死亡。剖検は行われなかった。
肉眼所見 初回手術時、二回目手術時;いずれも柔軟な嚢胞性病変を形成。割面は多房性で隔壁を
有し、内部は凝血塊様のやや粘性を帯びた暗赤色物質で満たされていた。

免疫染色所見 ・初回手術時;固定状態が悪く、異型細胞の細胞性格は不明である.
・二回目手術時;嚢胞壁および隔壁内に大型・多型で胞体の狭いvimentin 陽性の腫瘍
細胞が増殖しているが、少数のkeratin 陽性腫瘍細胞も認められる。
またその周囲には紡錘状だがkeratin陽性の細胞が帯状に嚢胞を取り囲むように増殖していた

問題点 (1)初回と再発時の病変は同様のものか?
(2)良・悪性の判断
(3)組織診断
※1991年3月に行われた第32回TNPC/JSHP・TNに出題し、当時は肝間葉性過誤腫
(Mesenchymal hamartoma of the liver)と診断した例です。
最終病理診断 Low grade biliary cystic carcinosarcoma.