第 57 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 13 区分 難解・問題症例
部位/臓器 消化管,小腸
演題名 小腸間膜腫瘍の一例
出題者および所属
上杉憲幸、鈴木正通、焦 宇飛、菅井 有、中村愼一
岩手医大中央臨床検査部臨床病理部門
症例の概要・問題点
症例 35歳、男性。
主訴 腹痛、食思不振。
既往歴 特記すべき事項なし。
家族歴 特記すべき事項なし。
現病歴 平成15年1月初旬より、腹痛、食思不振があり、時として嘔気を自覚していた。
同年4月後半より症状の増強を認め、近医受診し精査を施行したところ、下腹部に
手拳大以上の腫瘤性病変を触知し、岩手県立久慈病院消化器内科紹介となった。
入院後に施行された腹部CTおよびMRIにて下腹部、膀胱直上に位置する部分に小児頭大の
巨大腫瘤性病変が検出された。病変は消化管に取り囲まれる様に在り、内部には嚢胞状の
空隙形成が認められた。消化菅あるいは腸管膜原発の腫瘍として、手術目的に精査を
進めていたが、消化管穿孔による汎腹膜炎を併発し、同院外科にて緊急手術が施行された。
切除標本肉眼所見 切除された小腸においては、小腸間膜を主座とし小腸を巻き込むように増大する
大きさ22x13cmの巨大腫瘤性病変を認めた。病変の表面は漿膜により覆われていた。
割面では内部に嚢胞状の空隙形成を伴い、腫瘍組織は灰白色調で軟らかく、出血、
壊死を伴い、一部で小腸壁内へ直接浸潤が疑わる部分が認められた。
配布標本 腫瘍組織(小腸への浸潤部)

本症例の問題点 病理組織診断
最終病理診断 Histiocytic sarcoma
類似症例が紹介され、それはlymphomaの治療で軽快したが、本症例の治療は
どうしたかとの質問があり、それに対して本症例でもlymphomaの治療(CHOP)
が行われたが効果は全くなかった、との答であった。
診断に関しては異議なし。