第 56 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 06 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 造血器 脾
演題名 非定型抗酸菌感染による脾膿瘍を呈した骨髄異形成症候群の1剖検例
出題者および所属
長沼 廣1)、大谷 紀子1)、沖津 庸子2)
佐々木 徹2)、遠藤 一靖2)
仙台市立病院 1)病理科、2)内科
症例の概要・問題点
症例 79歳 男性
主訴 腰痛
現病歴 骨髄異形成症候群の診断で当院内科通院中、貧血が増悪したため入院。入院中に右顎下部毛嚢炎による下顎骨骨髄炎を起こし、切開排膿、抗生物質投与で軽快し退院。その後、腰痛が増強し、肝腎機能も低下したため、再入院となった。
現症 発熱なし。軽度の貧血、黄疸なし。肝、脾臓は触知せず、表在リンパ節も触れなかった.
入院時検査成績 RBC 360x104,Hb 11.2g/dl,Plt 7.4x104/ul。白血球は5000/ul。リンパ球数は102/ulと低下。軽度の肝腎機能低下、総蛋白 4.8g/dl,アルブミン 2.1g/dlと低下、CRPは17.7mmg/dlと上昇。
画像所見 平成13年8月にはCTにて肝脾腫、腹水はなかったが、12月に脾臓の著明な腫大と内部に低吸収域が多数見られ、造影効果はなく、悪性リンパ腫の合併が疑われた。両側の胸水貯留も見られた。
経過 発熱、腎機能低下、低蛋白血症が進行し、入院4ケ月で死亡した。
剖検所見 脾臓が1730gと腫大し、内部に多数の膿瘍を認め、一部のリンパ節にも膿瘍を認めた。膿瘍の細菌培養を施行、細菌は陰性で、塗抹標本にてガフキー9号の抗酸菌を認め、直ちに菌の同定を行い、mycobacterium avium complexと判明。抗酸菌は肺、肝臓、リンパ節、骨髄、消化管など多臓器に認めた。

問題点 肉眼的には結核を考えさせる像ではなかったが、塗抹標本にてヒト型結核が疑われ、一時は剖検室にいた執刀者、主治医が空気感染した可能性があると問題になった。剖検時の感染対策について。
最終病理診断 Atypical mycobacteriosis

配布標本 脾臓、肝臓、リンパ節
画像1 画像2
脾臓肉眼像:脾臓内に多数の膿瘍が見られ、被膜下では融合し、嚢胞状となり、一部破裂していた。 脾膿瘍内には淡青色胞体を持つ組織球の増生が見られた。

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チールネルセン染色 組織球内に無数の抗酸菌を認めた。 大腸粘膜には小結節が見られ、組織球の充実性増生が見られた。

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大腸粘膜のチールネルセン染色:浸潤する組織球の胞体内には無数の抗酸菌を認めた。