第 56 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 02 区分 B. 典型的・教育的・その他の症例
部位/臓器 気管,肺,胸膜 肺
演題名 検診で粒状・輪状の胸部異常陰影を指摘された1例
出題者および所属
鎌田 満1),竹川 弘美2),鎌田 義正3)
1) 青森労災病院検査科,2) 同第一内科,3) 弘前大学医学部附属病院病理部
症例の概要・問題点
症例 55歳。男性。
主 訴 胸部異常陰影(検診)
既往歴 高血圧症
家族歴 特記すべき事なし。
職業歴 船員。粉塵作業歴なし。
喫煙歴 20本×30年以上。
現病歴 平成12年11月17日の検診で胸部異常陰影を指摘され,精査のため当院一内を初診した。
初診時特に自覚症状なし。チアノーゼ,ばち状指認めず。その他特に所見なし。理学所
見として肺ラ音聴取せず。
検査成績 白血球数 10,260/μl,赤沈1h-9mm,2h-24mm
寒冷凝集反応・マイコプラズマ抗体ともに陰性
ツ反30×,
喀痰細菌検査:一般菌,結核菌とも陰性
肺機能検査,動脈血ガス分析とも正常
その他異常なし(BALF施行せず)
胸部XP 上肺野を主体に粒状,嚢胞状陰影を認め,
胸部CT 同様に粒状,および比較的壁の厚い嚢胞状陰影を認めた。
経気管支肺生検では確定診断がつかなかったので,胸腔鏡下肺生検を行なった。
配布標本はその時のものである。
なお,患者はその後特に積極的な治療をしなかったが,陰影が改善している。
画像所見:
胸部CT 上肺野を主体に粒状・および比較的壁の厚い嚢胞状陰影を認めた。(画像1)
組織所見 弱拡大では所々に星芒状の繊維化巣が散見されるが(画像2),背景の肺実質は気腫性である。
それとは別にかなり細胞豊富な結節がある(画像3)。そこでは一部に好酸球も見られるものの,
多くは弱好酸性の豊富な胞体を持ち、核質が明るい組織球様の細胞の増殖が見られる、その核には
縦走性の特徴的な核溝が確認される(画像4)。
免疫染色では S-100,CD68 が陽性で、いわゆるランゲルハンス細胞と確認された。
以上,本例は典型的なランゲルハンス細胞内肉芽腫の症例である。

問題点 組織診断。
最終病理診断 Langerhans cell histiocytosis(好酸球肉芽腫)

画像1 画像2

画像3 画像4