第 51 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース | |||||||||||||||||||||||
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症例の概要・問題点 | |||||||||||||||||||||||
症例 | 45歳 男性 農業従事者 | ||||||||||||||||||||||
既往歴、家族歴 | 特筆すべきことなし | ||||||||||||||||||||||
臨床所見概要 | 患者は45歳 男性。発熱、全身倦怠等で発症し、黄疽、腎不全等の症状を呈して、 プレショック状態で古川市立病院に運ばれた。これらの発症時期、肝機能ビリルビン値、 血清検査値等からワイル病を疑った。患者は、黄疽、出血傾向、尿蛋白強陽性を示し、 レスピレータ等の管理、輸血等を行ったが、症状は激烈で急峻にすすみ、 入院後3日目(全経過6日)に肺出血でなくなった。 |
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検査値概要 | 尿蛋白(+++)、尿糖 (++)、血清総蛋白4.9(6.5-8.5) WBC 15300, RBC 322 x 104, Hct 28.0%, 血小板1.7 x 104 (10x104<), プロトロンビン時間 86.9 sec(10-13), 活性化thromboplastin 44.5(24-40), Fibrinogen 723, 総ビリルビン 15.9(2.1-1.1mg/ml), 直接ビリルビン 9.3 (0.1-0.5 mg/ml), GOT 52, GPT 48, ALP 202, LDH 568, 脳脊髄液 細胞数1,017(好中球) |
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診断 | ・菌の分離:心嚢液よりleptospira様菌体を確認。 ・血清診断:芝浦株において一回目、x10、二回目x40で陽性。 この結果よりワイル病と診断確定した。 ・遺伝子検出:二回目の血清およぴ髄液のPCRによりleptospira遺伝子を確認。 |
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剖検概要 | [臓器重量] 身長174cm 体重69kg 肺:右2000g 左1850g 心臓:670 g 肝2300g 腎:右250g 左250g 脾臓:130g 胸水(-) 心嚢液(少量) 腹水50 ml 心臓、肝臓、腎臓などの各種臓器の腫大が著明。肺には両肺全体にわたる肺胞内出血、 気管支腔内出血が著明で、これが死因と思われる。炎症反応は目立たない。 臨床的には黄疽があり血中ビリルビン上昇が目立つが、肝臓に胆汁鬱滞や線維化、 肝細胞壊死などの病変は目立たない。 腎臓ではリンパ球をはじめとする炎症性細胞浸潤が著明で、 尿細管の損傷が見られる。複数臓器に好中球漫潤が軽度に認められた。 脾臓、気管分岐部リンパ節等リンパ装置の腫大が著明で、ミクロ所見上、芽球浸潤が目立ち、 敗血症に対する反応と考える。 |
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問題点 | 本例は宮城県で16年ぶりのWeil病の症例である。 Leptospira icterohemorrhagiae(スピロヘータの一種)感染症で、本症例は Weil病としては定型的な臨床症状を呈した。著明な肺出血で亡くなっており、 さらに臨床的に敗血症症状を呈し、肝機能障害、腎不全等を伴っていた。 感染症の一例として病態につき考察を試みる予定であるが、種々ご教示いただきたい。 |
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最終病理診断 | Weil病 | ||||||||||||||||||||||
配布標本 | (1) 肝臓 (2) 肺 | ||||||||||||||||||||||
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