第 51 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 11
部位/臓器
演題名 再生不良性貧血患者にみられた多発性肝腫瘤および肝紫斑症
出題者および所属
岩手医科大学医学部第2病理 八嶋亜紀子,増田友之
岩手医科大学医学部第1内科 三浦義明,鈴木一幸
岩手医科大学医学部第3内科 佐藤友亮,厨信一郎

症例の概要・問題点
症例 28歳,男性
臨床診断 再生不良性貧血,出血性ショック.
既往歴 昭和49年3月 (3歳),急性ITPにて、predonisoloneを内服するも
血小板数は10x104/m1以下であった.
慢性ITPとして経過観察されていた.

現病歴 昭和56年 (11歳),汎血球減少が進行し,再生不良性貧血と診断された.
15歳から27歳まで蛋白同化ステロイド剤 (アナドロール) 30 mgを投与され
輸血も必要なく過ごしていた.平成10年8月 (27歳),再び汎血球減少が進行したため,
濃赤輸血とG-CSF 300 mg,週3回の投与を行ったが,血液学的な改善を認めず,
平成11年4月当院血液内科紹介,入院となった.入院後、US、CTにて多発性肝腫瘤を
認めたため本学第1内科転科となった.

入院時検査所見 WBC 2760/μl,RBC 1.92×106/μl,Hb 5,8 g/dl,
Plt. < 1x104/μl、T-Bil 0.4 mg/dl,
AST 40 IU/l, ALT 99 IU/l, LDH 201 IU/l, γ-GTP 136 IU/l,
ALP 332 IU/l, T.P. 5.9 g/dl, Alb 4.0 g/dl, sFe 277 μg/dl,
TIBC 295 μg/dl, ferritin 1192.6 ng/ml, HbsAg (-), HCV Ab (+),
AFP 2.5 ng/ml, PIVKA-? 10 mAU/ml, CEA 1.2 ng/ml, CA19-9 5.1 U/ml

入院後治療経過 再生不良性貧血に対してG-CSF 600mgの静注と週一回の白血球除去赤血球輸血で治療した.
8月16日からcyclosporin 200mgの連日投与を開始した.
8月23日から40℃の発熱と白血球減少があり,cyclosporinの投与を中止し,
抗生剤による治療を開始した.解熱したため、cyclosporinの再開を考慮していたところ,
9月2日に右季肋部の圧痛が出現し,9月3日意識レベルが低下,
心肺蘇生を行うも反応せず死亡した.


剖検所見 腹腔内に2100mlの出血がみられた.肝臓は重量1310 gで,肝被膜下出血および
直径1cm・6cm程度の血腫が肝割面にびまん性にみられ,peliosis hepatisと考えられた.
また緑色を呈する5 mm・3 cmの腫瘤を両葉に散在性に認めた.
死因 はpeliosis hepatisよりの腹腔内出血と考えられた.


問題点 肝にみられた結節の診断として,演者らはfocal nodular hyperplasia
あるいはhepatic adenomaを考えています.
病理組織診断および病変の形成過程に付き御意見を賜りたいと考えます.

最終病理診断 FNH, adenoma, HCCのいずれか不明

配布標本 剖検時採取肝組織 (A,Bそれぞれ離れた部位より採取した緑色調の腫瘤性病変)