第 51 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 20
部位/臓器
演題名 剖検中に肝が酸臭を発した一例
出題者および所属
浅野重之1、本田義信2、近内育夫2、五十嵐誠治3
1 いわき市立総合磐城共立病院病理科,2 同未熟児新生児科,
3 栃木県立がんセンター研究検査部
症例の概要・問題点
症例 40週1日,女児
主訴 頭蓋内出血
家族歴 父,母(36歳)および兄にも異常は見られない.
現病歴  平成12年3月23日13時30分,40週1日(2,524g)で某院産科にて骨盤位,経膣分娩で出生した.
Apgar 7→10(チアノーゼ=1,筋緊張=2).仮死はなかったが,生後より,筋緊張低下がみられ,
元気がなかった.翌日(24日)になっても症状が改善しないため,同院小児科受診し,
頭部CTにて頭蓋内出血があるため,磐城共立病院未熟児新生児科を紹介された.

 当院初診時,意識障害,筋緊張低下がみられ,頭部CT上出血を考え,
脳圧下降剤投与と全身管理を行った.代謝性アシドーシス著明にてアルカリ補正を施行し,
約1日かかってようやくpH7.22となったが,その後はアシドーシスの改善が見られず,
同年3月28日12時10分永眠.

入院時検査結果 WBC, 25,000; RBC, 416x104; Hb, 15.4; Hct, 45.7; PLT, 12.7x104;
T. prot., 6.0; Na, 145; K, 5.05; Cl, 100; Ca, 9.5; GOT, 101; GPT, 26; CPK, 5,092;
Creatinin, 2.2; Keton, ++; pH 6.918; PaO2, 224.8; PaC02 12.8;
HCO3 2.6; BE, -28.7; Glucose, 13; Lactate, 18.54; An.Gap 47

剖検所見 全身浮腫,左肺び慢性出血,褐色調肝(酸臭),黄色透明胸腹水.
臓器は標準に比して全般的に重量が少なく,全身のリンパ装置の発達不良であった.
心 (15g),肺(Lt, 18.3g; Rt, 23.7g),肝(15g),脾(4.9g),腎(Lt, 15 g; Rt, 16.6 g),
副腎(Lt, 3.5 g; Rt, 2.6 g),胸腺(1.1g),心嚢液(0.8ml),腹水(15ml),
胸水(Lt, 10 ml; Rt, 8ml).


問題点 ?肝が酸臭を発した原因.
?本症例の病態について.
最終病理診断 先天性ビオチン代謝異常症の一つ(ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症)

配布標本