第 51 回 日本病理学会東北支部学術集会(JSP −TN) 抄録データベース
演題番号 21
部位/臓器 縦隔,胸腺
演題名 巨大縦隔腫瘍の一例
出題者および所属
栃木県がんセンター病理
津浦 幸夫、五十嵐 誠治、星 和栄
    同    呼吸器外科
横井 香平
症例の概要・問題点
症例 18歳、男性
主訴 咳嗽、胸部痛
既往歴、家族歴 特記すべきことなし
現病歴 '98年11月ころ左胸部痛を自覚し、近医を受診し胸部X-Pにて左第1弓の突出を指摘されたが経過観察となった。'99年1月には咳嗽、発熱が出現し、2月10日に咳嗽時の呼吸困難のため、当院に緊急入院となった。入院時、顔面に軽度の浮腫を認める以外に体表に著変なく精巣にも異常を認めなかったが、X-pにて前縦隔に21x18cmの巨大腫瘤を認めた。血液検査では白血球が17520/μlと上昇し、腫瘍マーカーとしてAFP10454ng/ml、β-HCG30ng/mlと異常高値を示した。腫瘍マーカーから悪性胚細胞性腫瘍と判断し、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンによる化学療法を3コース行った。化学療法により腫瘍マーカーはほぼ正常化したものの、画像上、腫瘍は入院時腫瘍径の185%にまで増大した。症状的にも終日起坐位でしか生活できず、化療を断念し準緊急的に手術となった。切除材料は全体に柔らかく、大きさは33x24x14cm,3800 gであった。割面では中心部に広範な壊死と辺縁部に径10 mm程度までの多数の嚢胞を形成する多房性腫瘍であった。組織学的には嚢胞壁は成熟腸型腺上皮で裏打ちされており、他に成熟した骨、軟骨、末梢神経組織など多彩な成分をみる成熟奇形腫であった。その後、本年1月に左右の胸郭内に数個の腫瘤影がみられ、2月に左側の摘出術が施行された。腫瘍は計3個が切除されたが最大のものは大きさ11x10x7cmであった。肉眼的には前回標本と同様であったが、組織学的には成熟した血管のangiomatousな増生像が主体で、一部に成熟腸管上皮と未熟な間葉系細胞を伴った血管構造を認めた。続いて4月に右側の摘出術が施行され、最大で13x8x5.5cmの大きさの胸郭内腫瘤2個と肺内結節が摘出された。肉眼的、組織学的には、いずれも第2回手術材料と同様の所見であったが、肺内転移巣を2ヶ所に認めた。初回手術後から現在までのところ、入院時認められた腫瘍マーカー値の上昇を認めない。

問題点 ?組織診断、?本例の推移する病態・経過をどのように解釈するか。
最終病理診断 Growing teratoma syndrome.

配布標本 第3回手術材料の主腫瘍